他人をほめる人、けなす人

会社で、家庭で、身近にいる不可解な人々の深層を探る

ずっと前に、先生に勧められたような気がしたのを思い出して、手にとってみた。


内容は、キャッチーなタイトルから想像できるものではなく、もっと他にも色々な○○な人が書かれている。それは、ネガティブなものだけでなく、ポジティブなものも。
個人的には「真に旅する人」のところがとてもよかった。

●未熟な人
大人はすべて、いくつもの役割を果たさなければならない。一人の人間としての成熟、精神的厚みは、これらすべての役割を柔軟にこなす能力にかかっている。
未熟な人物はそうすることを潔しとしない。彼はただ一つの役割に執着し、そこに全精力を傾注し、その第一人者にもなる。ここにいたって、彼は、他の分野でも、彼が何者でもありえないところでも、彼が何ひとつなしえない領域でも同じように評価されていると思い込む。
<例>
・ひたすら自分の仕事にだけかまけ、仕事を自宅にまで持ちかえり、他の話題には興味を示さず、日常生活の管理や子どもの世話は妻にまかせきりという人物
・もっぱら家庭内生活だに甘んじ、夫の仕事に関心を向けず、それを理解もせず、その生活や慣習を乱されるのをいやがる女性
●他人を引き立てない人
そういう人物を見破るためには、何でもよい、彼に関係がなく、他のだれかに関係のあることを話題にしてみるがよい。それも、巧みに話すことが望ましい。すると、せいぜい五分後には、彼のほうで話題を変え、彼自身と、彼のおこなったことに関心を移そうとするだろう。
<例>
・あなたの病について物語れば、彼は彼の病についての信じられないようなことをあなたに語るだろう。
・あなたが自分の企業について語れば、彼の企業の素晴らしさをいやというほど聞かされるだろう。
・旅行についても、試験についても、災難についても、そのほか何についても同様である。
●愚かさで支配する人
真の知性と狡猾さを見分けることも必要である。知性は秩序と調和を生み出そうとするのである。これに反し、狡猾さのほうは、相手をへこませ、相手に罠を張ることだけをめざす。
●企業と一体化する人
企業というものは、不思議なことに、企業家の人格の客体化だからである。彼のすべての長所、美点、彼のすべての関心、彼のすべての厳しさが企業内に伝わるのであり、同様にして、彼の欠点、彼の無関心、彼の無頓着も伝わるのである。
●不適応を認めない人
やがて、事態がさらに悪化すると、ますます自分が迫害され、陰謀に取り囲まれているように思うにいたる。こうして、しだいしだいに、自分の失敗を正当化するための理屈をつくりはじめる。「社会は腐敗していて、マフィアでいっぱいだ。こういう連中は連係していて、万事をうまくやってゆく…。だが彼は手を汚すようなことはしたくない、彼らと与しない。腐敗のなかへ引きこまれないために、むしろ周囲の悪徳にたいして戦おう…。」
●くり返すだけの人
二十年間同じ教材を使いつづける教師は、それを意欲も情熱もなしにくり返すだけで、当然退屈する。そして、彼とともに学生も退屈する。
●真の教養がある人
きわめて多くの場合、教養は、こういう引用能力、この種の博学と混同される。賢くて、学び、習得することのできる第一の型の人々の多くは、博識者と接触したときに、最初は自分が無知だと感じ、恥ずかしいと思う。しかしその後、自分が学びとったことを現実とつきあわせてみることによって、教養なるものが空しく、何事も説明しえず、何の役にも立たないという結論にいたりつく。だが、残念ながらこの結論は誤りである。
というのも、真の大いなる教養は人生の現実に密着しており、シェークスピアからゲーテ、ベートーヴェンからヴェルディ、パストゥールからフロイトといった大芸術家、大小説家、大科学者らは、大いなる知識の鞄を手にして、人間とさまざまの出来事に接近したらである。しかし、そのときにも、幼児のような驚きと感動の姿勢でもって。その鞄は、それで身を飾るためではなく、人知の限界を知るうえで彼らに役立った。自らの観察したものの深い意味を理解するだけでなく、何よりも、新しい発見を組織だて、人びとに伝えるうえで役立った。
●真に旅する人
旅は、不安をもたらすすべてのもの。自分の家、日常の安全で楽しいすべての関係からの完全な離脱を要求する。社会的な身分を放棄し、各地をさまよい、”ゼロ”になり、その後にふたたび見出され、以前とは異なる、よりよいものとして再生することを求める。したがって我々の伝説においては、旅は、真正でない、表面的な身分を放棄して、自身のより真正な身分を見出そうとするものである。自身の悪徳、傲慢、虚弱、偏見を払拭純化して、より高い価値に到達し、偏りのない目をもって世界を識ろうとするものである。
現代の組織された旅行やバカンスは、この理念からははるかに遠いものである。物理的・空間的な移動はあるが、危険、不便、異者との接触、放浪は、ほとんどないに等しい。
●インスピレーションにしたがう人
アメリカ文化は、企業のカテゴリーを個人に移し、個人が一つの企業であるかのように自分を扱うように促した。”おまえの心を適正に管理し、おまえのイメージをつくり、それを高く売れ”。自分自身と他人とをどのように管理すべきかを説く無数の本は、こうして書かれたのである。

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