隠者の夕暮 / シュタンツだより

民衆教育の父 ペスタロッチーの処女作

この本は、5年前までに勤めていた会社の顧問だった
尊敬するコンサルの先生がポロッとお勧め本として口にしたもの。
5年も経ってしまったが、ずっと気になっていた。
それで、手にしてみた。


Wikipediaなどでみると、幼児教育の祖であるフレーベルも、
このペスタロッチーの影響を多分に受けているようだ。
現代の児童教育の原点にあるのが、このペスタロッチーのようだ。
関係はよくわからないが、内容としては、モンテッソーリも、
ペスタロッチーの思いに通じるところがあるように感じる。
体罰について触れている箇所がひとつあり、注意が必要だ。
読み方を間違えてはいけないけれど、この部分だけが少しだけ、
最新の心理学に基づく教育のあり方と微妙な違いのあるところかも知れない。
興味深いところをいくつかメモ。

・145 上に立つ人々の無信仰は、下にある人々の不従順の源泉だ。
・15 家庭教育のもつ長所は学校教育によって模倣されねばならないということ、また後者は前者を模倣することによって初めて人類に何か貢献するということを証明しようと思った。
・34 他人が20もの言葉で説明することを、汝は二つの言葉で表すために幾晩も徹夜して工夫しなければならないとしても、その徹夜を惜しむようなことがあってはならない。
・35 わたしは子供に口で説明してやることはめったになかった。わたしは道徳も宗教も彼らに教えはしなかった。しかし呼吸が一々聞けるほど彼らが静かにしているとき、わたしは尋ねた。
・40 このようにわたしはどんな徳でも口で言う前にまず感情を喚起した。なぜかといえば子供が自分で言うことが自分でわからないようなことは、どんなことでも子供と語り合うのは悪いと思ったからだ。これらの感情にさらにわたしは克己心の訓練を結びつけ、このようにしてこれらの感情が直接生活に応用できるような態度を涵養した。
・42 あるそそっかしい女の子が、二、三時間身体と頭とを真直ぐにし眼をきょろきょろさせない習慣がつくと、それだけでもう道徳的陶冶の成績が挙がるのだが、それは自分で経験してみなければ誰も信じないだろう。
・54 そうするわけにはいかないんだ。お前たちがあれほど大人数で、しかもみなの者がめいめい習慣化している誤りや悪事をお前たちの間で行いでもしようものなら、お前たちはあらゆる悪感化を70倍も受けて、おそらくこの孤児院に来なかった場合より70倍も悪くなるだろう。小さな家庭ならその悪結果が人目も惹かず、人を苦しめもしないようなちょっとした事がらも、こうした人数の多い家庭では辛抱できない場合がざらにある。
・58 子供がものを思索し始めた最初の時期は、言葉本位の教授や、また学習者の精神状態と彼の外部関係とに適合しない教授によって乱される。
・(解説)私見によれば教育思想史上におけるペスタロッチーの位置は、哲学史上におけるプラトンないしカントのそれに比すべき十分の理由があるにもかかわらず、世人は余りにも特色深き人類愛・教育愛の化身としてのペスタロッチーに眩惑されて、彼のあの内容豊富な不朽の教育思想を探求し味得することをしばしば忘れてしまう。
・(解説)散乱し混沌としている博識もまた同様に自然の道ではない。
・(解説)夕暮の著者によれば「神は人類に最も近い関係である」。ここに「最も近い関係」とは神は自己自身ないし自己の本質において見られるという謂である。そこで人間は自己自身ないし自己の本質の内部感覚を信ずれば神と不死とを信ずることになる。
・(解説)彼はいかなる徳についても子供がそれを口で言う前にまずその感情を触発した。なぜかと言えば自分で言うことが自分で解りもしないようなことについて子供と語るは悪しきことだと考えたからである。かくて彼は子供自身の純粋な感情によって道徳心を育成しようと骨折った。

新字体・現代かなづかいに改めて出版された新訳とあるものの、
今の時代では使われないカタい文章の為、読みにくい。
明治か昭和初期のおじいさんしか、こんな言葉は使わないだろう…
こういう素晴らしい本は、原点から改めて翻訳し、
現代人にわかるように、再翻訳した方がよいのではないかと思う。
そのような書籍が、きっともっとたくさんあるはず。

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