鈴木敏文の「統計心理学」

「仮設」と「検証」で顧客のこころを掴む
この類まれなる思考と発想をものにせよ
10000店のセブンイレブンを築いた頭脳の中枢を55の金言から解明する!!

昔、流通業界(某チェーンストア)で働いてた私、
インターネットビジネスでもやっぱり、小売の考え方はかなり役だつ。

●原則

・自分の原点は心理学と統計学にある
・現場に行くことは決して悪いことではありません。しかし、どうして現場に行かないと分からないのか。店舗は一店一店全部条件が違います。1000店あったらどうするのでしょう。セブンイレブンなどは9000店以上です。現場主義には、本当のようなウソの話が結構あるのです。
・売り手にとって「非合理」な陳列の方が売り上げが増える

統計学と心理学… Mr.Xがいう、心理学と数学 という話と似ている。
そして、仮設と検証… テストテストテストのJayの話とも共通する。
現場主義というマッチョな考え方に惑わされないこと。

●不景気だから売れないはウソ

・多くの人は、今は需要不足であり、だから供給過剰の状態にあると考えがちですが、今は需要不足ではない。買い手市場の現状と売り手市場の発想のギャップが供給過剰をもたらしているのです。
・マクロで経済を考える人たちは消費は一定であり、消費者がすでに買ってしまったものは、もう売れないと考えますが、人間の消費はそんなに経済合理性で動いているわけではありません。消費社会は単なる経済としてではなく、人間の心理をもとに考えろ。顧客の心理を無視しては商売は成り立たない。私が社員にこう言い続けているのは、消費というものが顧客の心理によって大きく左右され、しかも、その傾向がますます顕著になっているからです。
<解説>
・競争に終始する会社は、自社の業績が下がったとき、競合の業績を見て同じように下がっていれば景気のせいだと考える。競合の業績が上がっていれば、競合との比較で敗因を分析し、その手法をまねて挽回しようとする。一方、絶対的なものを目指す会社は、自社の業績が下がったのは顧客の心理に応えられず、共感共鳴を得られなかったからで、それはなぜなのかと問題を掘り下げ、もう一度、自分たちの仕事のあり方を問い直す。

景気のせいにするのは、もうやめにしよう。
これは、モノや企業活動だけではなく、就職活動をする学生だって同じ。

●多様化のウソ

・着るものにしても、多くの人がみんなの仲間入りをして外れたくない、あるいは、自己差別化して自分を目立たせたいという欲求を持っていて、この欲望に合致するものや、欲望を刺激するきっかけがあれば、タンスが一杯でも、人はそれを買う。これが人間の心理です。
・あるものが一定量以上まで流行するとファッションになりますが、日本の場合、その勢いがすさまじく、瞬く間に一つの国を席巻します。特定の高価なブランドを中高年女性から女子高校生まで、猫も杓子も持っているような光景は日本意外見られません。なぜ、これほど画一化が起きるのか。一つには、国民の所得階層の幅が狭いということがあります。消費者の大部分が特定の所得階層に集中している。これは、富裕層と貧困層との所得格差が大きいアメリカなどとは対照的です。

なるほどこれは新しい視点をもらった。
さすがに、日々膨大なナマのデータに触れているだけあって、
この人は、すごい。ぶれてない。

●データの読み方

・大学出たての鈴木氏は、ひたすら調査活動に明け暮れた。
・POSシステムは基本的に、仮説が正しかったかを検証するためのものであって、POSが出した売り上げランキングの結果をもとに発注するのではないのです。ここが一番誤解されやすいところです。POSは”明日のお客”のデータを出してくれません。
・忘れてはならないのは、データを記録として見るのと、マーケティングに使うのとでは、まったく読み方が違うということです。売れた量の結果データだけを見て、将来的なマーケティングを考えるのは大間違いです。
・アンケート調査などは、アンケートのとり方次第で結果が全然違ってきます。質問の内容や聞き方にしても、本当は答える人が心理的な影響を受けないよう十分に配慮すべきなのに、誘導している場合が多い。枕詞をつければ、とても”イイエ”とは答えづらいでしょう。
<解説>
・「デフレ時代」を分母にして考えると、商品単価が下がっているから、「減るのは当然」ということになる。そこで、鈴木氏は消費支出の金額ではなく、顧客の購入数量、店舗における買い上げ点数に目を向ける。すると、IYグループの店舗データでも、2001年秋ごろから、むしろ、「増加傾向にある」ことに気がつく。つまり、消費者はものを買わなくなったのではない。「不況だから消費がシュリンクしている」と考えるのは、消費の実態からかけ離れた「本当のようなウソ」であり、不況下であっても、「お客の本当のニーズをすくい取って商品や品揃えを変えていけば必ず売れる」(鈴木氏)ことが把握できる。ここに、凡人と天才の違いがある。
・社会調査には「キャリーオーバー効果」といって、回答者は設問に答えているうちにある朱の先入観を植えつけられて誘導され、その調査の本当のねらいである最後の設問への答えが影響されてしまうことがあるという。例えば、自衛隊についての意識調査で、質問項目を進むうちに、安全確保、災害救助、民政協力などの活動があることを「学習」し、最後に「自衛隊は必要か、必要ないか」の質問に答える。結果は、大半が「必要」となる。

データ主義と言う言葉には、心情を理解せず、データに惑わされ
凝り固まった考え方をするような印象があるが、この人は違う。
そういう評価は、全くの誤解だ。
こういう人は絶対に、恣意的なアンケートにも誘導されないだろうな。
それは、正しいデータの読み方を知らない人の(似非)データ主義であって、
本当のデータ主義というのは、データの中から心理を読み取るものなのだ。

●常識や過去にとらわれない

・みんなが”いい”と思うことなどやる必要はなくて、むしろ、”そんなのダメだろう”と思うようなことに意味がある。
・小売業では同業他社の店舗を見て”偵察”することが広く行われているが、鈴木氏は、「他店見学をしてはならない」と言い放ち、「傲慢だ」「唯我独尊だ」などと同業者や経営コンサルタントなどから批判され、物議をかもしても、いっこうに意に介さない。
<解説>
・素人集団だからこそ、過去のしきたりや制約条件にとらわれず、自分たちのやりたいこと、やるべきことを実現していった。これまでの常識とこれからやりたいことが矛盾したとき、素人の発想で矛盾を解消し、コンビニ店舗という舞台で次々とイノベーションを起こしていった。
・過去の成功体験も、因果関係のセットて記憶される。成功が大きければ大きいほど、このセットは強固になる。そして、あらたな課題に直面すると、その成功体験で原因となったことを今度は手段で使おうとする。ところが、以前と同じような結果が起きない。それでも、自分の中にインプットされた因果関係を崩そうとしない。
・よく、リストラの対象になってアウトプレースメント会社などで再就職支援を受けるとき「自分のこれまでの経験が活きるような仕事をしたい」と答える人がいるが、これも経験に縛られた人間の典型だろう。その経験が活きるようならばリストラにはならなかったことに気づかないほど、人間は過去の経験にこだわり、いろいろな制約条件をつけようとする。

思い込みを全部はずして、テストし、自分の目で確認し、改善し続ける。
こういうのを、本当に「科学的」というのだろうと思う。

●その他

<解説>
・企業が追求し実現しようとする価値には、「相対価値」と「絶対価値」があるという。「相対価値」の追求とは、競合他社との比較で、より売れる商品を出して競争に勝とうとすることであり、「絶対価値」を追い求める企業は競争に勝つこと以上に、自分たちがつくりたいものやつくるべきものをつくり、売りたいものや売るべきものを売ることを大切にする。

相対価値と絶対価値 これはいい言葉を知った。
相対価値だけで考えるビジネスなんて、ぜんぜんおもしろくない。
もしかしたら、仕事かつまらない理由は、
そのあたりにあるのかも知れない。