脳と心の地形図

思考・感情・意識の深遠に向かって
心=脳のはたらきを、細かく具体的に紹介する脳の図鑑
170点のカラー図版がいざなう最新の脳科学の領域

脳の研究というと、この本を監修している養老孟司さんとか、テレビによくでる茂木健一郎さん、あるいは苫米地さんなんかを思い浮かべます。でも、最近の人だと、テレビの影響で木村拓哉さん演じる「ミスターブレイン・九十九さん」を思い浮かべるのでしょうか。
偶然にも、この本を読んでいる時に妻があの番組(Mr.Brain)をみていました。
気になったところをテーマごとに書き抜いてコメント。


●子育てについて

・脳の中には、成熟するのに何年もかかるところがある。注意を集中するのに大きな役割を果たす網様体などは、髄鞘形成が完了するのは思春期かその後。だから思春期前の子どもは、注意力が長く続かない。前頭葉ともなると、髄鞘形成は成人してからようやく完了する。青少年が年長者にくらべて感情的、衝動的なのはそのためだろう。
・この世に生まれてくるとき、すでに右利き、左利きはしっかり決まっている。妊娠15週目には、ほとんどの胎児は、右手の親指を吸っているという兆候をみることができる。

●嗅覚の活用と気づき

・ほとんどの感覚刺激は、入ってきた側と反対の半球で処理される。刺激情報は脳梁を経由してただちに反対側の半球に送られるのである。目。顔面神経以外の神経、聴覚刺激。★ただし、嗅覚だけは交差ルールの例外で、右の鼻の穴から入ってきた匂いは右脳で感じる。
・学生に風変わりな匂いをかがせながら新しい単語を覚えてもらい、次のその単語を思い出すときその匂いを漂わせると、成績が20%向上したという実験結果がある。匂いはほかの感覚とちがって大脳辺縁系に直接働きかける。脳の情動中枢に直行するルートをたどる。

私は10代の頃からプラーナーヤーマ(ヨーガの呼吸法)をしているが、これは左右の鼻をコントロールして行う。しかし右鼻の通りが悪いので耳鼻科にいくと、骨が曲がっていて、右の鼻腔が狭いということがわかった。私が左脳体質なのは、このことと関係があるのかも知れない。
●うつと感情のコントロールについて

・本を読んだり、おしゃべりしたり、確定申告の計算をするといった左脳の活動に没頭していると、不安や落ち込みを忘れられる。左脳の活動に熱中すると右脳の感情的反応が抑制されるので、深い悲嘆もやわらず。
・反対に、恐怖に駆られると(少なくとも一瞬は)明晰な思考ができなくなるし、性交を長持ちさせたい若者には、頭の中で九九を唱えろという古典的なアドバイスが存在する。
・あらゆる薬物依存の例にもれず、アルコール依存症も遺伝的な要因が関係している。患者の子どもがやはりアルコール依存になる割合はそうでない人の四倍で、親から引き離して育てても変わらない。
・自閉症およびアスペルガー症候群は、男性タイプの脳が極端になったものだと主張する人もいる。
・無意識の記憶→扁桃体へ
・意識的な記憶→海馬へ
記憶がある程度の強さで扁桃体に焼き付けられてしまうと、もう自分の意志で抑えることはできない。身体が反応して完全にリプレイされながらトラウマを再体験することになる。PTSDもこの状態。無意識の記憶は強いストレスを受けているときに形成されやすい。。ストレス下で放出されるホルモンや神経伝達物質が、扁桃体の興奮をさらに高めるからだ。
・躁鬱病患者と創造的な才能を持つ人には、共通点がある。睡眠が短くても平気だし、仕事に強い集中力を発揮する。ものの感じ方も深く、多彩である。うつのときにためらいながら問いかけ、考えをめぐらせた問題に、躁のとき力強く、確信を持って答えられるのだ。
・気分障害の診断基準を満たす人の割合は、人口全体の5%前後なのに対し、芸術家や作家は三割に達していた。詩人にいたっては実に50%が本格的な治療を要するという結果が出た。
・幻覚が脅威になりえないことを無意識の脳は知っているから、感情的には平静でいられる。しかしPTSDにおけるフラッシュバックは、あくまで記憶であって新しく作られた何かではない。扁桃体にしまわれた記憶が引き金になって感覚や感情が同時にほとばしる。
・自殺する割合も高い深刻な病気の遺伝子(うつ病関係)がとっくの昔に(進化論的に)排除されないのは、うつ病もかつては、生き残りに役立つ価値があったからかも知れない。自分ではコントロールできない、悪条件の環境に置かれた動物がうつ病によく似た状態になる。ふだんは支配的な立場にいる動物が、もっと強い敵に圧倒されて従属的になったときも、やはりうつ病に似てくる。つまりこれらは、エネルギーを節約する、とか、過剰な対立とリスクを避ける意味で、生存に役立っている。しかし現代社会では、うつ病はあまり助けにならないどころか、むしろ事態を悪化させる。
・うつ病の中心となる特徴は、人生から意味が失われていくこと。重いうつ状態の人は、人生を統一のとれたひとつのパターンと見なすことができない。つかみどころのないことが次々と起こるだけで、まとまりもなければ理解もできない。一方躁病患者にとっての人生は、見事なまでに整った輝かしい統一体である。すべてのものがつながっていて、どんなに小さなことにも意味があると感じられるから、幸福感に満たされ、愛とエネルギーにみなぎっている。創造力も活発で、ほかの人が気づかなかったり、見過ごしたりすることにも関連を見つけられるので、新しい概念を生み出せたりする。うつ病と躁病に深く関わっているのは、前頭葉前部の内側の下部、つまり腹内側部皮質とか膝下皮質と呼ばれるているところである。躁病のときには異常に活発になり、うつ病では(前頭葉前部のほかの領域とともに)停滞する。

アージュニャーチャクラのことだ。

・記憶は、偽の記憶を植えつけることも可能だし、思い出されて空想が付加されたものも、記憶として定着する。だから本当の記憶と空想記憶を区別することは難しい。

このことを逆にいえば、瞑想で過去が変えられるという意味になるのかも知れない。
●犯罪心理について

・扁桃体のごく一部にかすかな発作が起こったせいで記憶にない暴力行為をする人に対して、扁桃体の外側基底核を焼ききることで怒りの爆発がなくなった例がある。

すべての凶悪犯罪については、死刑制度という無意味な刑罰よりは、脳の研究対象にする方がよいのではないか、と思った。精神鑑定をしろという意味ではない。脳の鑑定だ。

・イギリスの会社経営者のうち6人に1人がサイコパス、正式には反社会的人格障害の診断基準を満たしているという結果がある。サイコパスは脳の損傷が原因だとする説もあれば、母親との結びつきが希薄だったからという意見もある。たしかに扁桃体を刺激して正常に機能させるには、幼児と母親の密接な相互作用が欠かせない。(冷淡で、いばり屋で、嘘つきで、良心が痛まず、リスクを冒したがる)

●能力開発や成功哲学との関連について

・野心についてたずねた時、左脳に言葉で回答させたら「製図工になりたい」と答えたのに、右脳に絵で文字を並べ表現させたら「カーレーサー」と答えた。

ジーニアスコードにおいて、直感を絵で表現することやマインドマップの原理がここにある。ぶっとびビジネスコーチングで学んだこともこれと同じだ。

・表現された感情はほかの人にも伝染する。みている側の脳が、反応して影響をうけるからだ。笑顔はフィードバックの仕組みが働く。みた側は「何かよいことが怒っている」と脳が判断して喜びの感情を生み出す。

・脳は対象を連想や関連性ごとに記憶する。

これはまるで、ディレクトリ構造のデータ整理ではなく、データにタグをつけるタギングの概念と同じだ。つまりタグをつけて整理するgoogleのサービスに代表される新ツールの方が人間の脳にあっているということができるかも知れない。

・脳を基準にすれば、幻覚も、想像も、ほんとうに「見ている」状態も基本的には同じこと。

感覚ニューロンの活動量の差さえなくせば、瞑想が効果を持つことの意味がよくわかる。

・数学の計算は女性が得意。ただし数学的な推論は男性の方が得意。
・個人的な記憶 : 海馬
・事実記憶 : 側頭葉

記憶術は、事実記憶を個人的な記憶におきかえて行う技術
●性と恋愛について

・てんかん発作のときに背内側核を刺激すると、性的に高まった徴候がまったくないのに射精してしまう。また大脳辺縁系で視床下部の隣に中隔という期間があるが、男性の中隔を刺激すると、快感なしにオーガズムに達してしまう。つまりオーガズムとは、基本的に一種の「反射性てんかん」なのである。
・オキシトシンは視床下部で作られ、生殖器官を刺激すると放出され、オーガズムのとき、出産の最終段階に脳内にさかんに出回る。浮遊感や、心が温かく満ち足りた感覚を呼びおこし、相手との結びつきを促進する。オキシトシンの放出があったときの相手は、ことのほか強く印象に残る。これは依存のメカニズムとよく似ていて、オキシトシンはエンドルフィン – 脳内のアヘン様物質 – とも密接につながっている。恋人たちが離れ離れになるときに心が動揺するのは、オキシトシンのレベルを上げようとするからだろう。

●カルトと洗脳について

・大脳辺縁系から新皮質へのニューロン経路が遮断されたり、切断されると、感情を覚えることができなくなる。この状態では、記憶力や計算力などのIQはそのままでも、ものごとを天秤にかけたり評価できなくなる。合理的な対応が浮かんできても、ぞれが正しいのか、一つを選び出すことができない。

カルトにおいて指示まち病が増えることと、感情が希薄になることには関係があるといえる。
●その他知識

・PETは、fMRIと違って画像は鮮明で驚くほど美しいが、解像度はfMRIにおよばない。また血管に放射性マーカーを注入しなければならないという欠点もある。一年間に一人の人間がうけられるのは12回程度。
・音楽でゾクゾクする感じ : 感情的には、弛緩 – 喚起 – 緊張 – 安堵 – 弛緩の流れをたどる。

おそらく研究によってつくられる小室氏の音楽はサイバートランスのようなものは、このあたりのことを考慮されているのだろう。
●全体的にとくに気になったことと頭の中でおきた化学変化
1. 聖書(黙示録)にある「額の刻印」というのは、アージャニャーチャクラが開発/進化した者のことを意味するのではないだろうか。
2. 意識の場所は、単一機能ではなく、相互に作用しあう大規模なニューロン集団のしわざだという考え方が主流のようだ。これは、すべては空であり、相互依存・縁起しているという仏教哲学に通じるものと思える。生態系と複雑系の学問が、これを解く鍵のような気がする。
3. やはり、犯罪心理→うつ病→躁鬱→能力開発→洗脳→催眠→成功哲学→瞑想 というのは一本の線でつながっていることを再認識した。

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