日本型エレクトロニックコマース

スマート・マーケットの創造

16年前のとても古い本だけど、
書かれている未来予見がほぼそのとおりに進行していて
びっくり。


●本質

・「イントラネット」の本質は、「インターネット」である。したがつて、イントラネットを企業に導入するということは、「インターネットの文化」を企業に導入することを意味している。そして、「インターネットの文化」とは、「オープン」(開放性)、「ボトムアップ」(平等性)、「ボランティア」(自律性)の三つを特徴とする文化であり、従来の企業文化の特徴である、「クローズ」(閉鎖性)、「トップダウン」(階層性)、「リーダー」(他律性)とは正反対の文化である。イントラネットを企業に導入するということは、この「カウンターカルチャー」を企業に導入することである。そして、カウンターカルチャーとの「文化摩擦」を通じてこそ、企業は、新しい組織形態である「スマート・コーポレーション」へと進化を遂げていくことができる。
・上記の言い換えとして…
  イントラネット = エレクトロニック・コマース
  開放性 = 情報公開 平等性 = 消費者主導 自律性 = 自発参加
  閉鎖性 = 情報閉鎖 階層性 = 企業主導  他律性 = 説得牽引
  企業 = 市場
  スマート・コーポレーション = スマート・マーケット
・「流通革命は、流通マージンがゼロになるまで続く。」というものである。この命題に従えば、電子決済という金流の流通革命は、「決済マージン」という流通マージンがゼロになるまで続く。繰り返そう。電子決済の本質は「金流の流通革命」であり、「決済マージンの最小化」をもたらす市場競争の実現である。

イントラネット、およびマーケットにおける影響を、
このあたりで完全に言い切っている。
逆に言えば、この三つの文化を理解せずにイントラを導入しようとすると、
その文化摩擦も激しいものとなる。(以前私がいた職場のように)
●変化がもたらす社会的な変化

・エレクトロニック・コマースとは、元来、グローバルな電子商業空間であり、その空間においては様々な国家の貨幣が使われ、自由に流通することになる。こうした国境を持たない国際的な性質をもつ商業空間においては、貨幣の国家主権という考え方が適用できなくなる。なぜならば、「流通するものが貨幣となる」からである。電子マネーは国家の主権を超え、国際的な性格を持って、エレクトロニック・コマースの中で流通していく。このことを理解することが重要である。
・リサイクル経済の活性化は、電子マネーの出現が「市場経済」に与える最大の影響の一つになっていくと思われる。そして、このリサイクル経済が活性化することにより、社会における資源消費とエネルギー消費の節約が促進され、ひいては、地球環境問題の根本的原因ともなっている大量消費・大量廃棄型の市場経済を変えていくことが可能になると期待される。
・「戦略的消費者」彼らは、企業の顧客データベースに載ることよりも、自ら企業データベースを操り、企業ホームページを巡って、企業と商品の情報を入手することを好む消費者である。そして彼らは、企業から商品を「提案」されることよりも、企業と「対話」することを望む消費者である。

この本が書かれて16年後の今、
いよいよこのあたりの話が現実的になりつつある。
つまり、世界規模のライフスタイルの変化が、
はじまろうとしている。
●時流にのる為に ビジネスへの応用

・エレクトロニック・コマースにおいては、これまでの「ニッチ・マーケット」が「ニッチ」でなくなる可能性がある。世界中のニッチ・マーケットを集めれば、「ビッグ・マーケット」になり得るからである。
・「一円単位での支払が可能」というメリットは、「緻密な価格競争」を実現していく。一円玉を処理するベンディング・マシーンを製造するのは困難であり、それ以上に、消費者にとって、一円玉を機械に投入するのは極めて面倒である。こうした価格競争の”治外法権”は市場の至る所に見出されるのであるが、電子マネーは、こうした”治外法権領域”にも価格競争を浸透させていく。電子マネーは一円単位での支払を容易にするからである。
・これからは、「中身を試してから購入する」という意味での”WYTIWYG”(What You Test is What You Get)の文化も開花していくと予想される。
・サーチャー型商品は、「商品を購入するための商品」という意味で、一種の「メタ商品」であると考えることができる。(中古車販売店や古本屋ショップ情報と商品情報の検索サービス)
・特に、人材の側が個人ホームページを開設し、これに企業側がアクセスする方法は、単なる経歴書的な情報のみの書類審査や、堅苦しい雰囲気での緊張した状態の面接審査とは異なり、人材が自由に伸び伸びと個性を発揮し、自己表現と自己アピールを行うことができるというメリットがある。
・「知識支援の市場」は、これからのエレクトロニック・コマースにおいて最も開花する市場の一つである。これまでの企業にとって、企業活動に必要な高付加価値の「知識」(ナレッジ)や「智恵」(ノウハウ)を調達する方法としては、シンクタンクやコンサルタントに委託する方法が一つの有力な方法であった。しかし、これらのシンクタンクやコンサルタントのうち、彼ら自身の保有する価値ある知識と智恵を提供する力量を有したものは必ずしも多くはなく、その実態は、市場において知識と智恵を保有する専門家、有識者、企業人を調査し、この調査結果を企業クライアントに「整理された情報」という二次情報として提供する「調査会社」もしくは「知識ブローカー」としての役割を果たしているものが大半であった。
・秋葉原電気街においては、こうした情報ゲームの構造を変えた企業が出現した。それは、商品を陳列した売り場を持たず、商品説明を行う店員を置かず、価格表と販売員だけのカウンターを置いた店舗を出店した企業であった。「商品の現物は他店の売り場でじっくり見て来て下さい。商品の詳しい説明は他店の店員に聞いて来て下さい。当店は商品陳列も、商品説明も一切行いません。しかし、当店はどこよりも安い価格で販売します。」
・これまでのマーケティングのパラダイムは、「シーズ指向」(商品)から「ニーズ指向」(市場)へと転換を遂げてきたわけであるが、このパラダイム転換の背景には、大きく二つの要因がある。一つは、市場における諸企業の旺盛なマーケティング競争の結果、ニーズが明確に存在する市場は、急速に「成熟市場」になってしまう傾向があり、マーケッターの主戦場が、潜在的なニーズがあると思われる「新規市場」へ向うためである。

このあたりを理解してマーケティングに応用した企業が、
この15年間、大躍進を遂げたといえる。
やはり、正しい未来予見は、マーケターにとってとても重要。
●注意すべき点・誤解されやすい点

・消費者は「便利さ」によって「買う気」になっているわけではないという当然の事実は、現在、カタログ通信販売の顧客が、電子決済を用いることなく二兆円ものショッピングを行っているという事実が示している。「魅力的な商品」さえあれば、消費者は、電話、ファックス、葉書による申込方式であっても、また、郵便振替、銀行振込による支払方式であっても、これを”障害”と感じることなく商品を購入している。
・電子決済と電子マネーに関しては「セキュリティ」(安全)から「コンフォート」(安心)へのパラダイム転換を図らなければならないと言える。すなわち、ある技術が技術開発の観点からも、社会制度の観点からも「安全」であるということと、消費者に対して心理的に「安心」を与えるということは全く別な問題であるということを理解する必要がある。
・消費者にとって心理的に十分に受け容れられている「成熟商品」は、ほとんどの場合、「ブラック・ボックス」である。すなわち、消費者にとって「原理はよく分からないが、安心して使える」というブラック・ボックス的な心理が形成されている商品こそが成熟商品であると言える。
・企業は、「ワン・ツー・ワン・マーケティング」という言葉に甘い幻想を抱く前に、まず、この「逆もまた真なり」を理解しておく必要がある。企業は、非常に安い費用で、多数の個人と対話することができる = 消費者は、非常に安い費用で、多数の企業と対話することができる。

反対に、このあたりを誤解した企業の戦略は、
次々に消えていった。

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