心にのこるお母さん

愛の母親像を求めて
がんばり屋、楽天家、箱入り娘、おこりんぼ…どこにでもいるふつうのお母さんの体験談を通して子育ての喜びとコツを語る、出会いと感動の本。

親業ケースブックからの引用がいくつかあった。このやりとりは、カウンセラーの手法そのもの。NLPやファシリテーションの考え方をそのまま子育てに応用したもののような印象を受ける。「親業」についてさらに興味をもった。
また、p14からの「箱入り娘からの脱出」についは、妻とシェアしたいと思った。


●叱らない

・責められたり叱られたりしているときの子どもは、緊張していますし、叱られることから逃れたい気持ちが動いていますから、叱られていることの内容を理解することができなかったり、内容を全く覚えていないことさえあるのです。しかも、恐怖心だけが残り、それが心のしこりになってしまうのです。子どもは何かに失敗したときは、しまった—という気持ちになっています。その気持ちを汲むことができるお母さん・お父さんであれば、今後に同じような失敗をしないためにどうしたらよいかについて、子どもといっしょに考え合うことになるでしょう。あるいは、失敗をどのようにして償ったらよいかについて、考え合うことにもなるでしょう。
・「約束」がしばしばお母さんの提案を子どもにおしつけることになっていることに注意しなければなりません。「約束」というのは、二人の者が十分に意見を出し合って、二人ともが本当に納得したものである必要があります。お母さんのおしつけた提案を子どもが守れないと、「約束を破った」と言って叱っていることが多いことに注意しなければなりません。

ということは、自立の要点は、子どもと積極的に「ルール」について話し合い、そして、子どもが自らその「ルール」を作り出すことにある、といえそうだ。
●親を批判することの重要性

・私たちは面白い研究を始めています。それは、自分を育ててくれた親を批判してみるということです。批判をしないと、自分を育ててくれた親の育て方が、知らず知らずのうちに自分の子育ての中に現れてきていて、それが子どもを苦しめていることが少なくないことがわかったのです。ところが、親を批判することは悪いことであるように思うお母さんやお父さんが多いと思います。それは、自分を育ててくれたのだから—という思いがするからですし、親を敬え—と教えられ、敬うことをしない子どもは悪い子のように思い込まされたからでもあります。とくに、親の言うことは何でもハイと言ってきけ—と教えられ、ハイといわない子どもは悪い子のように評価されたことが、私達の心の中にしこっていて、親を批判できない子どもを作り出しています。それがどんなに子どもを苦しめているかを私たちが知ったのは、子どもの自発性の発達について研究するようになったからです。
・親に向かって—という言葉の裏には、親はえらいんだ—とか、育ててやっているのだ—といった傲慢な心がうごめいているのです。親とは、本当にえらい人なのでしょうか。えらいとすれば、どんなところがえらいのでしょうか。それは、人格について言わなければならないでしょう。そのことを反省する力のあるお母さんは、決して自分をえらいなどと思わないでしょう。ですから、親に向かって何です—といった言葉は出てこないと思います。

幼い頃の祖母がそうだった。そして猛反発した記憶がある。また青年期には、ついた師匠という存在がそのようなタテ社会の価値観の中に生きていた。子育てや、自分が(とくに女性の)部下をリードするときには、この師匠を批判することを受け入れるというステップが必要だった。それを理解できるようになるまで、かなり悩んだものだ。マネジメントでも全く同じことがいえるのだ。

・お母さんが子どもに対して「親切」にしてあげているのに、子どもが喜ばないとすれば、それは「親切」ではなく、おせっかいということになります。「余計な世話。不必要に立ち入ること」なのです。日本人には、このおせっかいが多く、それは自分本位であることを意味します。おせっかいをしておきながら、相手が喜ばないと、相手を非難しています。欧米で生活していますと、このおせっかいが少ないので、さばさばした生活になるわけです。

自分の親にはあまりなかったが、周囲の親族の中にみてとることができる。しかしこのおせっかいを克服できている親は少ない。むしろ「おせっかいをしている親側の気持ちを理解しななさい」という押し付けすらまかり通っているのが現状だ。子どもたちが、がかわいそう。

・ご主人が威張っていて、オレの言うことをきけ—といったワンマンであった場合に、自発性の乏しいお母さんであると、ご主人の言うことに従って子育てをすることになるでしょう。その場合には、家庭に波風が立たないように見えますが、お母さんの子育ては自己決定ができないという自信のなさから、不安そのものであったり、矛盾の多いものとなり、子どもはいろいろと不安を経験しなければならないでしょう。

自分の場合は、姑に他する母がそのような状態だったかも知れない。とくに兄達にはそのような不安があったのではないかと思う。
●ゆとりの大切さ

・三歳未満の子どもは、例えば手を洗ったり歯を磨くときにぐぐずしていますが、それは、水で遊んだり歯ブラシで遊んだりするなど、「遊び」が主体になっているからです。ぐずぐずしていることに大きな意味があるのです。時間に対する観念が発達していないからです。お母さんのほうでは計画が決まっているけれども、それに乗ることができない発達の段階にあるのです。その点をよく理解してあげることができれば、「早く」と言わないですむでしょうが、日常生活を何とか順調に営みたいと思っているお母さんは、どうしてもいらいらしてしまうでしょうね。そうしたお母さんから変身するにはどうしたらよいでしょうか。それは、日常生活にゆとりを作り出すことです。
・食事中に立ったり座ったり…何回ぐらい立ったり座ったりするかを数えてごらんなさい。そうしたお母さんの姿が反映して、子どもも立ったり座ったり、落ちつきがなくなってしまいます。
・帰宅したばかりの子どもに向かって、「宿題は?」「勉強しなさい」などと言うお母さんは、全く子どもの気持ちを理解できない人と言えましょう。家庭は子どもにとってくつろぎの場所です。パートから帰ってきたお母さんに家でもせっせと働きなさいと誰かが言ったら、どういう気持ちになるでしょうか。「休ませてよ」と言うでしょう。また、お父さんが帰ってきたときにお母さんが「会社の仕事を持ってきましたか。家でも一生懸命にやりなさい」などと言ったら、お父さんは怒り出すでしょう。そのような雰囲気の家庭には帰りたくなくなるでしょう。

母親が「ゆとり」をもつためには、経済力と時間、父親である夫からのいたわりと思いやりが必要だ。結局のところ、父親の経済力とコミュニケーション能力にかかっている。
●まかせて いいところとダメなところ

・(テレビ漬けになりかけている子どもの父親がテレビを物置にしまうという強行手段をとったことについて) 子育てには、こうした決断の必要なときがあります。子どもの自己統制の能力にまかせていたのでは、負けてしまいます。そうした状況から子どもを守るのは親の役目と言えます。

常習性のある麻薬的なものと、身の危険が迫るもの、つまり「失敗させてみる」ことが許容できないことについてだけは「まかせる」のではなく、「強制執行」する必要がある。このあたりのバランス感覚と境界認識が、今の親には欠けていて混乱がある。だから、何がいいのかわからない、という状態に陥ってしまう。原則と例外事項はセットで学ぶべきなのだ。
●遊戯療法

・遊戯療法の治療者の資質
絶対に子どもを叱らないと、批判をしないこと、ほめないこと、そして、温かくおおらかな態度で子どもに接すること。
・目を離さず、手を貸さず、口を出さない。
親に対してすなおな子どもの多くが、意欲の乏しい子どもになるのです。お母さんの「口出し」の多くが、子どもの自発性・独立心に圧力を加えて、子どもを意欲のないダメな子にしてしまっているのです。
・とにかく子どもに「まかせて」みること。子どもは「挑戦」してみて、とうとう自分の力ではできないと判断しますと、お母さんに「やって」と言い出すでしょう。その時には、子どもの気持ちを受け入れて、いっしょにやるなり、手伝ってあげましょう。「ほらごらん」などの非難の言葉は絶対に避けましょう。非難の言葉を聞きますと、子どもは「挑戦」の意欲を失ってしまいます。

「ほめない」という言葉があるのにちょっとびっくりした。干渉しないということは、子ども操作する目的の「ほめ」をも、我慢しなければならない。ほめてのばすということは確かによいことではある。でも、そこに子どもを操縦しようという下心があると、敏感な子どもははっきりと見抜くということだろう。
●周囲のオトナとの接し方の注意

・宿題をやっていかない子どもに対して先生が叱るようならば、パパはお手紙を書いてあげようと言いました。その内容は、「『家族の団らん』を大切にしたかったので、宿題はできませんでした。あしからず」というものでした。
・おばあちゃんの子育ては、子どもにおとなしくしてもらいたいから、甘い菓子漬けにしたり、テレビ漬けが少なくない。

周囲のオトナとどう折り合いをつけるのか、それが今の時代の最重要課題のような気がする。ゆとりのない大人、子どもの大人、やんでいる大人が多すぎるのだ。そしてここに、自分が何をしたいのか、その鍵があるような気がする。
●評価をしない

・「よい子」だ、「悪い子」だ—といった評価はしません。評価をすることは、子どもを枠組の中にはめ込んでしまう気先生があるからです。「よい子」にせよ「悪い子」にせよ枠組の中にはめ込まれて、苦しい思いをしている多くの子どもをたくさんに見てきたからです。お母さんにしてもお父さんにしても、他人から「よい人」だと言われると、それにこだわって「よい人」らしく振る舞おうとするでしょうし、「悪い人」と言われないように防衛するでしょう。それによって、自分らしくありのままに行動することができなくなってしまいます。

よい子、悪い子という言葉をたまに使ってしまうので、反省した。よい子や悪い子がいるのではなく、あるのは、よい行為や悪い行為のはずだ。人格を決め付ける叱り方につながるすべての評価は、よくない。

・日本一のお母さんの要素
1. 非常に働き者
2. ユーモアがある
3. スキンシップが上手
4. 他人への思いやり
5. お父さんに認められていること

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