妊婦は太っちゃいけないの?

快適な妊娠生活のカギは「めぐりのよい体」
妊娠中と産後に役立つ中医学と漢方の知識をやさしく伝授

医学は日進月歩で進化しています。
数年前の常識、数年前に人から聞いた話を
そのまま信じるのは、危険だということ。
巻末に、信頼できる鍼灸院として縁の深い知人が紹介されていて
ちょっとびっくり。

●マインドセット

・「太ってもいいのよ。めぐりさえよければ」
・排卵を繰り返しながら、体は妊娠を待っていたこと。初潮も妊娠・出産も、いずれ訪れる更年期も、すべて一人の体に起こるものであること。<妊娠している体>は、時期がくれば<産みたい体>になるということ。そして、出産後はまた<妊娠したがる体>に戻っていくこと。そんなことを考えると、妊娠している今の体がとても興味深く、愛おしく思えてくる気がします。
・まもなく出産。赤ちゃんとの対面を心待ちにする反面、「ちゃんと産めるのだろうか」と不安になるときもあるかもしれません。でも、臨月になるまでおなかの中で赤ちゃんを育ててきて体、そして、あなたの中で育ってきた赤ちゃんは、信頼に値する存在です。お産のことは、<産みたい体>と赤ちゃんの意志にまかせて大丈夫。あとはのんびり、残り少ないマタニティライフを楽しみましょう。
・体重が増えるのがいけないのではなく、『よぶんなもの』がたまるのがまずいのです。気・血・水が滞って、よぶんなものが体にたまると、それがいずれは高血圧や糖尿病などを引き起こしやすくするきっかけになるわけですから。太っていても、気・血・水の『めぐり』がよく、毎日きちんと排便がある人は安産ですよ。胃腸に負担をかけずに食べ物を消化・九州するためには、火を通した温かいものをよく噛んで食べること、そして早寝をするのが基本。また、『よぶんな水分』をためないためにも、妊婦こそ体を適度に動かし、汗をかいて排泄をうながすことも大切です。
・最近では、むくみが直接妊娠に悪影響を与えることはなく、むしろ妊娠中のごく生理的な反応であるという認識が広まってきました。そもそも、妊娠中はホルモンの関係で、普段より体内の水分が多くなっています。これは、水分が多いほうが組織が伸びやすく、子宮口も開きやすくなり、赤ちゃんを産みやすくなる、という理由から。ごく生理的で理にかなった現象といえるでしょう。

そういえば、前の産院では妻は、むくみや塩分、体重をものすごく厳密に管理されていたみたい。
重要なことはバランスと循環なのだろうというこの話、すごくよくわかる。

●女性の体は七の倍数で変化

これは2000年以上も前に書かれた中国最古の医学書『黄帝内経』にある言葉です。現代と若干のズレはありますが、2000年にして1~2歳の差。
7×2=14歳で初潮
7×3=21歳で妊娠に最も適した年齢に突入
7×4=28歳までがピーク
7×5=35歳では、肌や髪にはっきりと加齢による変化が見えてくる
7×6=42歳では白髪が増え、生殖機能にも衰えが目立ちはじめる
7×7=49歳で閉経

●気

・日本の女性は気虚傾向の人がとても多いんですね。健康体であれば妊娠中も今までと変わりなく過ごせばよく、漢方薬も必要ないというのが中医学の基本的な考え方ですが、妊娠初期に出血傾向がみられたり、風邪をひきやすくこじらせやすいなど、気虚の兆候がはっきり現れている場合には、生活改善や漢方薬によって積極的に気を補う方法を勧めています。
・それ以外の人には、まずは気を消耗しないような生活を送るようにアドバイスします。といっても、じっとしていたほうがいいという意味ではありません。体内のエネルギーを有効に活用するためには、飲食物や呼吸から新鮮なエネルギーを取り入れて、活動によって消費するという『循環』も大切です。無理は禁物ですが、特に体調に問題がなければ、日中はふだんどおり体を動かしていていいのです。最も避けなければいけないのは、夜更かしと寝不足ですね。
・妊娠中期以降は、おなかの赤ちゃんが大きくなって、どうしても上半身と下半身の気の流れが滞りがちになります。散歩やヨガ、ストレッチなどの運動は、よけいな脂肪がつくのを防ぐという目的だけではなく、適度に気のめぐりをよくする作用もありますので、ぜひ毎日続けたいものです。
・消火器の機能が低下しているときほど、甘いものが食べたくなるものです。この甘は、砂糖の甘さとはちょっと違います。砂糖の甘みは、一時的には元気になるかもしれませんが、残念ながら補気薬の代用にはならないのです。一方、穀類や豆類、芋類などの自然な甘みは、消火器を丈夫にして気を補う作用がありますので、「太るから」と毛嫌いせず、適度に食べるようにしましょう

食品や漢方に頼るより前に、適度な運動も大切。

●血

・妊娠してきれいになる人と、逆にやつれてしまう人がいますが、これも血の不足と大きな関係があります。血の不足があると、特に中期以降は髪や肌につやがなくなり、抜け毛や肌荒れといったトラブルが起こりやすくなります。
・血が大量に消費される妊娠中は、言い換えれば肝の繁忙期でもあります。肝が働きすぎて消耗すると、血をめぐらせるという機能も低下して、肌への潤いと栄養補給もおろそかになってしまいます。「肝」の機能失調を予防して、妊娠中のさまざまな不快症状を改善するためには、まず、「血」が不足しないような食生活を送るのが大きなポイントです。そしてもうひとつ、ストレスをできるだけためないようにすることも大切です。実は、肝は血のめぐりや血流を調節するだけでなく、体のエネルギーである「気」のめぐりをコントロールして、精神・情緒を安定させるという働きも受け持っています。そのため、ストレスを受けると、気のめぐりが滞って肝の機能を低下させ、血のめぐりや貯蔵という機能にも悪影響が起こる、という状態になってしまうのです。
・ふだんの日は、血を補って気持ちを落ち着かせる作用があるナツメをお茶として楽しむとか、夕食は特に『補血』を意識した献立にするのも効果的です。
・雑穀には、本当にたくさんのメリットがあります。まず、妊婦に必要な微量栄養素をたっぷりと含んでいます。特に、血を補う作用があり、良質のたんぱく質も豊富なアワは、妊産婦に最も適した雑穀といえそうです。
・中医学的には、『血虚(血の不足)』とうつ症状には、はっきりとした相関関係があることが分かっています。産後に血を補うことは、体の回復だけでなく、産後ブルーの予防にも役立つはずです。
・産後の月経は、妊娠前の月経と全く同じとは限りません。出産をきっかけに「血」のめぐりがよくなり、月経痛がなくなる人もいれば、出産による消耗で、月経血が少なくなるなどの変化が現れる人もいます。

ナツメ茶、とアワ、
さっそく日常に取り入れてもらおう。

●水

・中医学では、牛乳は体に「潤いを与える」というよい作用がある反面、「よぶんな水分を増やす」という、悪い作用も持っていると考えています。唾液が多い、舌にべったりとした苔がついている、むくみやすいなと、よぶんな水分による症状が出ている人は、牛乳を豆乳に変えたり、緑黄色野菜や小魚、大豆製品をたっぷりとる、といった方法のほうがよさそうです。
・中医学では、むくみが上半身に現れるか、下半身に現れるか、というのがひとつの診断基準になります。顔や手指など上半身のむくみは、体の水を全身に運び動かす『気』のパワー不足から起こることが多いのです。この場合、午前中(特に朝)に起こりやすいという特徴があります。一方、足や腰など下半身がむくむのは、『血』のめぐりが悪いことと関係しています。血と水分が共に停滞し、体の上部に戻っていかないという状態になるので、主に午後(得に夕方)に多い症状です。妊娠中に問題となりやすいのは、水分代謝と血行が悪くなった下半身のむくみですが、実際に足のむくみが出ている人をみると、胃腸の機能低下からきていると思われる人、体が冷えきっている人など、原因はさまざまです。梅雨時~夏は、たとえ冷たいものを控えていても、湿度の影響で、よぶんな水分がたまりがちになります。こんなときには、よぶんな水分を排出する作用に優れた食材を大いに利用しましょう。

湿度の高い夏だということもあるけど、むくみを気にしているようだから
まずは冷たいものの注意と、牛乳を豆乳に変えることの二つ、
説明しておこう。

●食事

・昔、皇族の女性が跡継ぎを身ごもると、周囲に大切にされすぎ、運動不足と食べすぎで太ってしまうため、わざわざダイエットに使うようなお茶や漢方薬でコントロールしていたという話があります。そのときによく用いられたのがさんざしのお茶です。(十二週未満の人、流・早産の危険性がある人は避けてください)
・料理に甘味を使わなければ、デザートに甘いものを少々食べたところで、全体のバランスとして、とり過ぎになることはありません。まず、甘い味付けが多くなりがちな和食から、甘味を抜いてみましょう。
・特に便秘に効果が高いのは、プルーん、干しブドウ、ひじき、黒ゴマ、松の実など。なお、気をつけなければいけないのは、「朝起き抜けに冷たい牛乳を一気に飲む」「フルーツや生野菜をたくさんとる」などの便秘解消法は、誰にでも会う方法ではないということ。「スタミナ不足からくる便秘」のように、胃腸の機能が弱っている人にとっては、冷たい牛乳や生野菜、フルーツなどは、負担以外の何ものでもありません。

●漢方

・そもそも、漢方薬はよくいわれるように、ゆっくり効くものばかりではありません。これは、慢性病に漢方薬が用いられることが多いために生じた誤解で、風邪に使う薬は一包のんだだけでも、何かしらの変化があるはずです。
・漢方薬を、西洋医学の理論で用いるのは、野球の選手にサッカーをさせるようなもの。
・「血」をめぐらせる活血薬や、「気」をめぐらせる理気薬、下におろす作用がある瀉下薬(下剤)は、流産を招く恐れがあるため、禁忌あるいは慎重に用いることになっています。半夏や、麻黄などがこれにあたります。
・妊娠中は特別なトラブルがなければ、漢方薬は服用せず、できるだけ食養生や生活改善で対処するのが原則です。
・古代中国では、食材が持っている性質と味を利用して、健康を維持し、病気を予防する「食医」が、病気を治す「疾医」より地位が高かったといわれているほどです。
・知識を身につけるのは悪いことではありませんが、それ以上に大切なのは、自分の体の反応に敏感になるということです。実際に食べたときに、体はどう感じているのか…。それを自分で判断することを、忘れないで欲しいと思います。

やはり、薬剤師よりも栄養士なんだろうな。
漢方と食養、栄養の知識は、生活の知恵としてもっと学ぶ必要がありそう。
毎日のことなんだから。

●その他の注意

・特に下着には注意が必要です。ブラジャーは、乳腺の発達を妨げないという理由だけでなく、アンダーバストを締めつけないためにも、早めに妊婦専用の柔らかい素材しものに代えたほうがいいでしょう。また、五ヶ月以降につける腹帯やガードルも、骨盤の下部だけを支えるものならよいのですが、おなかや体を締めつけるようなものは避けましょう。そもそも腹帯をする習慣を持つ国は少なく、日本の中でも、腹帯やガードルはしないほうがよい、という考えをもつ医師もいるほどです。必要かどうかはその人の生活によっても違ってくると思いますので、「気持ちよく感じる」ほうを選ぶといいでしょう。
・「ゆけつ」へのマッサージは、セルフケアとして応用できそうです。「ゆけつとは、背骨から指二本分外側のラインにある『肺ゆ』『心ゆ』『脾ゆ』などのツボのこと。詳しい場所を知らなくても、ラインに沿ってマッサージをしていれば、自然にツボに触れることになります。パートナーに背中をなさしくなでてもらうだけでも効果があると思いますよ
・呼吸器を、シーズンオフのうちにしっかりと鍛えておくことが、花粉症の症状を軽く済ませるコツです。呼吸器は、適度な運動や正しい呼吸によって鍛えることができます。ウォーキングやマタニティスイミング、マタニティヨガなど、妊娠中に勧められることが多いスポーツはどれも花粉症の予防にも役立つことでしょう。

●腎の機能について

・腎の機能を補う作用のあるヤマイモ、黒米、黒豆、黒ゴマ、クコの実
・白髪まで増えてしまった場合には、血の不足だけでなく、生殖能力のコントロールタワーである『腎』が疲れている可能性があります。

白髪が増えてきた。
そうか、腎が弱っているのか。
かかとを暖めるとか、ヤマイモとか、やってみよう。

●出産と産後

・今は、分娩台で仰向けの姿勢でいきんで産む、というのが、当たり前のように考えられていますが、病院出産がなかった時代は、世界中どこにも、仰向けの姿勢で産む女性はいませんでした。みんな、上体を起こした姿勢で出産していたのです。これは、仰向けがとても苦しい姿勢であることを示しています。また、剃毛や浣腸、重い分娩監視装置の継続的な装着など、お決まりのコースのように行われている処置も、産婦にとっては不快なこともあります。こうした処置は、本当に必要なのか、今、世界的に見直される傾向にあります。このほか、陣痛促進剤や会陰切開の適用、夫や家族の立ち会い、母子同室かどうか、母乳指導はどうしているかなどをあらかじめ聞いておくと、その産院の個性や方針が分かってくると思います。
・医学的な適応があって行われる帝王切開は、恥じるべきことは何もありません。傷跡は勲章というくらいの気持ちで、ゆっくりじっくり産後の体をいたわってあげましょう。
・周りの人にはどうしても頼りたくないというのなら、「産後シッター」に頼むといった方法もあります。一時的な出費は避けられませんが、長い目でみれば決して無駄ではないはずです。
・中国では、出産後一ヶ月間を座月子(ざげつし)と呼び、この間母親は、周囲からとても大切に扱われます。お姑さんが何から何まで身の回りの世話をしてくれるので、母親は、授乳以外は何もせず、一日のほとんどを寝て過ごすことができます。
・気をつけたいのが、赤ちゃんを抱っこする姿勢です。腰を突き出して、赤ちゃんを左右のどちらかの腰骨に乗せるようにする人が多いのですが、この姿勢が骨盤をゆがませ、さまざまなトラブルが起こる原因になるといいます。
・骨盤を起こしておなかに力を入れた姿勢で、肩の力を抜き、腕の力で抱っこする。筋肉を使わない楽な抱っこは、間接を痛め、肩や腰、手首の痛みを招くもとにもなります。長い目で見れば、「腕の力で抱っこ」のほうが、体に優しい方法なのです。

産後シッター 調べる価値あり。

●冷えに注意

・日本の産院では、お産のあとに助産師さんが冷たい水を持ってきてくれたりします。中国の産院では、産後は体を冷やすものはよくないと、血を補う黒糖をお湯に溶かした『黒糖茶』を出すのが一般的 中国では、産後の冷えは長引きやすく、血のめぐりの悪さや月経痛、第二子不妊、更年期障害など、婦人病の原因になることもある、という考えが浸透しています。そのため、どんな産院でも、冷えだけは厳重に避けるように指導されているのだそうです。
・まず、冬はもちろん、夏でも薄着をしないこと。布団から出やすい肩や首は特にしっかりと冷えから守る、冷房は使うとしても弱めにする、授乳のときはおなかにタオルを当てる、そしてね妊娠・出産と深い関係にある『腎』とつながっている足のかかとを、しっかりと保護することが大切です。
・ナツメとさんざしをブレンドしたお茶は、気や血を補うとともに、血のめぐりをよくして消化を助ける作用があるため、中国で産後茶としてよくのまれているのだそうです。

さんざしも探しておこう。

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