敵を見抜く・引き込む・操るテクニック
名著、チャイルディーニの「影響力の武器」を、日本人向けに、そして現代にあわせて詳しく説明したような、わかりやすい本。あの本がわかりにくかった人にはこちらをおすすめ。
実例や応用例も多く、詐欺師にひっかからないように、騙されないように現代を生き抜く上では必須の内容だと思う。「心理戦略家」というキーワードが思い浮かぶ。
■ヒトラーの言葉
「大衆を操作したいのであれば、できるだけ易しい言葉で訴えよ」
「大衆を操作したいのであれば、伝えたいものを何度も繰り返せ」
「大衆を操作したいのであれば、肝心の要点を絞り込んで伝えよ」
「大衆を操作したいのであれば、論理よりも感情に訴えて揺さぶり上げよ」
■車の宣伝に美女が使われる理由
そのような光景を見るたびに、脳には次のようなメッセージが無意識に書き込まれる
「この自動車は、こんな美女が好んで乗るぐらい、素晴らしいものなんだ!」
「この自動車に乗れば、このくらい美しい女性を自分のものにできるのだ!」
■沖縄で電気こたつが売れる理由も、
CMで「団欒」=「こたつ」のイメージが売られたことが理由。
■foot in the door テクニック(段階的要請法)
一度目の簡単な依頼を受け入れさせ、一貫性の心理を利用して次のより高いレベルの依頼(本来の依頼)を断りにくくさせる
– 試乗/試着/試食
– 署名→募金
– アンケート→関連する行動の依頼
– 襟ピンをつける→臓器提供の同意
– お茶→SEX
– 3000円を借りる→1万円を借りる
防御 : 小さな要請の後には必ず大きな要請が待っていることを肝に銘じる
■Door in the face テクニック
罪悪感を利用し、一度目の依頼を断らせた後に、すかさず本来のより易しい依頼をする。
– 「今からドライブに行こうよ」「今から二泊三日で温泉旅行に行こうよ」
「拒否」
「じゃあ、せめてお茶だけでも」
■Low Ball テクニック
不利な条件を隠して、あるいは相手が喜びそうな条件を提示しながら、とにかく相手の受け止めやすい球を投げて依頼を受けさせる。その後に、「実は」とか「そういえば」といって、相手にとって得とはいえない他の条件を開示し、要求を通す
■恐怖アピール
・相手に恐怖を与えるためには、相手より立場が上にあることが絶対条件。この条件がなければ、恐怖を与えることはできない。
・恐怖の後に、その恐怖を避ける具体的な提案(本来の要求)をすることがポイント
■レトリック(ことばづかい/修辞法/説得技法)
どういう言葉づかいをすれば、人間を説得できるかというテクニックのこと
– 疑問系で相手に決定させた印象を与える
– 言葉の意味づけを変える
– 600人のうち400人が絶対に死ぬ – 200人が絶対に助かるなどのアンケート誘導
■先手必勝
パーソナルスペース侵害に伴う罪悪感のメカニズムの利用
– 交渉場面 : 先に待っているほうが、心理的に相手を威圧することが知られている。
先に来ているということは、強みになる。
別に遅刻しているわけではなくとも、相手は「お待たせしてすみません」となる
– 初デート : 最初のデートだけは決して時間に遅れてはならない。
■好印象
企業の受付のセクションに美人の女性を配置するのは、訪問した取引先に好意を抱かせるための戦略である。
■占い師のテクニック
「相手の悩みを見抜くなんて簡単なことですよ。ただ黙って30分も話をふんふん言いながら聞いてりゃ、向こうから全部話してくれる。こちらは、その悩みを繰り返して、口に出してやるだけです。すると、相手は驚いた顔で、「どうしてわかったんですか?」と言ってきますよ。自分で全部しゃべっているのにね。そして、話のふしぶしから旦那さんと別れたがっているようであれば、別れなさいと言い、会社を辞めたがっているようであれば、辞めなさいと勧めるんです。もちろん、絶対言うことを聞きますよ。だって、その答えは、結局、自分でもともと持っていたものなんですから」
■獲得的印象操作 – 取り入り(ingratiation)
1. 最初は異議を唱え、徐々に譲歩することで、あたかも相手に説得されたかのように見せる。それによって相手に満足感を与え、イエスマンではないことをアピールする。
2. 第三者を通じてほめる
3. 相手が普段ほめられ慣れていない典をほめる
4. 時折些細なことについて批判を混ぜながらほめる
■獲得的印象操作 – 自己宣伝(self-promotion)
何かに成功した場合に、それは運や偶然といった外的要因ではなく、自分の能力や努力といった内的要因によるものであるとアピールする。
■防御的印象操作 – 言い訳/弁明(account)
自分の責任を認めるか否かと、行為の悪質性や被害を認めるか否かの組み合わせで、さまざまなパターンがある
一般的には、4否定→3正当化→2弁解→1謝罪の順でより大きな効果がある。
1. 否定(denial) : 自分の責任も行為の被害も全く認めない
2. 正当化(justification) : 自分の責任は認めるが、行為による被害は認めない
(確かに自分がやったが、それがどうしたというのだ)
3. 弁解(excuse) : 自分の責任は認めないが、行為による被害は認める
(確かにあなたに迷惑をかけてしまったが、仕方がなかったんだ)
4. 謝罪(apology) : 自分の責任も行為による被害も認める
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5. 回避(meta-accounts) : ノーコメントや調査中など
6. 棄権(disclaimer) : 万一にそなえて、事前に非難をかわすための前置きをする
(間違っているかも知れないけど~云々)
7. Self-handicapping : 不利な条件があることをわざと人にアピールする
■ファストフードの対面式衝立が低くなっている理由
お客が気づまりを感じ、席を立ちやすくすることで回転率を上げるため。
■ボディーランゲージの理解
<嘘>
・嘘をついている人は手を隠そうとする
・嘘をついている人は手で口や鼻の周辺を何気なく触るしぐさが増える
・嘘をついている人は何度も姿勢を変え、足を組みかえる
<色>
・赤ネクタイは「パワー・タイ」必死な、心理的な圧力をかけようとしている可能性
・暖色系を好む人 : 客観的外交型
・寒色系を好む人 : 主観的内向型
・赤を好む人 : 感情の起伏が激しい
・青を好む人 : 内向的
・茶を好む人 : おっとりとして几帳面
・黒を好む人 : 二面的な性格が強い
<体型>
・ベビーフェイスの女性 : 頭が良く/社交性が高く/健康で/正直者の印象
・太った人 : 怠け者/おしゃべり好きの印象
・やせた人 : 神経質の印象
・筋肉質の人 : 自己中心的/エネルギッシュ/社会性に富む印象
・ひげを生やした人 : 頑固の印象
<位置>
対面式テーブルの場合は、相手からみて一番右側に座ると、最終的に判断され、親近効果により好印象をもたれやすくなる
■投資詐欺のテクニック
多数のターゲットを用意して、どんな場合でも当たるような予測を伝える
STEP1 以下のように伝える
・あがる(500人)
・さがる(500人)
STEP2 あたった方のリストにだけ、さらに伝える
・次もあがる(250人)
・次はさがる(250人)
STEP3 二度あたった250人のリストに、アプローチをかける
■詐欺師の常套句
・○○○と言ってだますやつが多いから、こっちも困っているんですよ
・ほかの人はだませても、あなただけは騙せないなぁ
・まずいこと言っちゃったかなぁ。あなたは秘密は守れますよね?
・どうして必要ないと言い切れるんですか
・みんなそう言って失敗していくんですよ
・よかったですね。たくさんの選択肢か選べますよ
・この団地の奥さんはみんな持ってますよ
・しょうがないなぁ、誰にも言わないでよ。あなただけ三万でいいから
■その他
物事を何でも都合よく解釈するのは、プラス思考とは違う。プラス思考とは、逆境に陥った時、それをはね返すような心の持ち方を言うのであって、何もない時にプラス思考をしている人は、単に白昼夢を見ているにすぎない。
単に悪い面を見たくないという現実逃避は、精神分析でいう「否定」のメカニズムであり、これでは成長・成功はない。