罪と罰(下)

「良心がある者は、あやまちを自覚したら、苦悩するでしょう。
 これがその男にくだされる罰ですよ、 — 苦役以外のですね」

これが、書名から想像できる主題かも知れません。
けれどもちろん、到底このような、わずか二行でまとめられるものではありません。
もっともっと、
重く、
深い。
やはり巨匠と呼ばれる人の文学作品は、本で読むことに価値がある。
あらすじ本や漫画、映画では感じることができないものがあります。
もちろん、邦訳ではなく原語で読めたらもっと違うんだろうなとも思います。
ラスコーリニコフが書いた論文として表現される思想、
こういうものは150年も前に議論されていたのですね。
凡人と非凡人、法を踏み越えていく者、ナポレオン。
20世紀のおわりに日本でおきたサリン事件で逮捕された人の手記に通じるものがあるように思いました。
あの中で行われていたこと、思想、手を下した当事者の手記に重なるものを感じました。
彼らもまた、同じ葛藤の中で生きている。
とても似ているような気がします。
彼らがこの罪と罰を読んでいれば、また違った結果になっていたのかも知れません。
そして、最後の、ラスコーリニコフとソーニャの…
私は自分自身を、ラスコーリニコフに似ている、と思いました。
そしてまた、スヴィドリガイロフにも似ている、と思いました。
私の妻に、ドゥーニャを、ソーニャを重ねてしまいました。
哲学や歴史とともに、文学作品というものもやはり、
読んでおくべきだなと思いました。

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