ザ・エージェント

ベストセラー作家を探しつづける男

数年前にブックフェアで講演を聴いて以来、ずっと気になってた。
そして、この人が関わった本は、知らないうちに何冊も読んでいた。びっくり。
トム・クルーズの同名の映画もあるようなので、みてみたい。

●マーケターやプロモーションライターとして理解しておきたいこと

・いつしか、自分でも作家志望者に対してアドバイスできるようになっていた。たとえば精神科医の最上悠さんと会ったときは、話を一時間ほど聞いて、「だったら、タイトルは『こうすればうつから抜け出せる』でいきましょう。構成は五章立てにして、序章に典型的な臨床事例を持ってきて、一章は…」という話が自然にできるといった具合だ。今では書籍になりそうなネタを持っている人と少し話せば、出版社は○○で、装丁に△△さんのイラストを持ってきて、タイトルは□□で、構成はこんな感じで…などと、即座に思いを巡らすようになった。

言い方を変えると、構成や装丁や章立ては、
作家自身が作っているのではない、ということ。
これは衝撃的な事実だった。eBookでそうなのは知っていたが、本の世界でもそうなのか。
やはり、本はコピーライターが書く時代になったというのも、本当なのだなと実感した。
そしてこれは、プロモーションライターとして生きたい人もしっておくべき事実だ。

・私もイングリッシュ・エージェントに在籍していたときは、欧米の作家や彼らのエージェントに毎日のように「Woo Letter」を送っていた。それは文字通り「求愛の手紙」だ。ただ単に「あなたのエージェントがしたい」では誰も相手にしてくれない。そこに求愛にも似た熱い思いを託さなければならないのだ。自分と自分たちの会社のテイスト、相手の仕事や著作を見て感じたこと、考えたこと、自分と相手の共通点。それを具体的かつ端的に述べるのである。「すごいですね」「すばらしいですね」「面白いですね」。そんな薄っぺらな感想では、すぐに底が割れてしまう。「この人は私の仕事を理解してないな」と思われてしまう。注意しなければならないのは、つい調子に乗って相手を見下した、まるで評論家のようなことを述べてしまうことだ。それではもちろんうまくいくはずもない。ラブレターに「私はあなたが好きだが、あなたの鼻は少々上を向きすぎている」などと書いたらどうなる? 相手を尊敬し、もっと言えば相手に惚れ込んで、その上で自分の意見をぶつけなければならない。

このWooLetterの要点については、
理解しておくべき。
どんなことにもあてはまるし、使える。

・海外からの情報の中に、ある時期、頻繁に登場する単語があるのだが、それらをキーワードにした現象やムーブメントは、二年ほどすると必ず日本でも話題になるのである。

いわゆる、このタイムマシンビジネスというやつは、インターネット時代では、
この二年という時間はもっと短くなっているのだろうか。
いずれにしても注目すべき内容だ。
ちなみに、この本の中で実際に著書は”LOHAS”について、
(それが日本でブームになる前に)予見していた。

●コンテンツ制作として理解しておきたいこと

・よい著者プロフィールとは何か。よい企画書とはどういうものか。多くの場合、企画書に添付される著者プロフィールは、ただ単に作家の経歴を羅列するだけだ。何年に生まれ、どこの学校を卒業し、どういう会社を立ち上げ…現在に至る。事実を列挙するだけ。これでは誰も興味を示してくれない。作家のキャラクターが端的にわかる数字を示すのだ。こんなことを何年間やった。これぐらいの規模でやった。こういう結果が出た。それは業界ではこういうレベルの仕事だ。そういう数字だ。

プロフィールのところは、ありがたい。
村上氏の継承でも少し説明があったが、
いつも、どう書いていいか悩んでいた。

・「彼のキャリアを社会に還元できるテーマは何か」→作家○/読者○
 「書きたいものを書く」→作家○/読者×
 「マーケティングに基づいて書く」→作家×/読者○
・「内部告発」本や「暴露」本といったスキャンダラスなテーマで本を出せば、爆発的に売れるだろう。それに飛びつくのは「本を売る」という観点から見れば「アリ」だ。しかしそれを出版したら最後、彼の作家人生にはずっとネガティブな印象がついて回る。そして彼はさまざまなニュースソースを失うことになる。
・ビジネス書や実用書はネタが勝負なのだ。ネタとは作家自身の経験や蓄積されたノウハウ、知識のことだ。ネタが十分にあれば、構成を立てるのはそれほど難しくない。その次に絶対に必要なのが個性だ。ネタにも作家にもオリジナリティがなければらない。すでに流行しているものの後追いだったり、どこかで見たことのあるような方法論だけでは話にならない。逆に私たちは、作家の知名度や実績にはあまりこだわらない。それよりもネタがどれだけ面白く、かつオリジナリティに溢れているかだ。

そして私もこの禁断の誘惑に、負けそうになったことがある。
作家人生を一発で終わりにするような内容で勝負してはいけない。
それと、ライフワークという言葉を考えていけばいくほど、
作家×/読者○であるべきという考え方に、どうも納得がいかなかった。
それがこれで、とってもすっきりした。
本当に感謝したい。
キーワードは「社会起業」なのかも知れない。

・私たちは「その分野で誰が一番か」ではなく、「誰が一番有望か」を基準に考えるのだ。つまり、現在の評価よりも将来の可能性の大きさで判断する。
・「カッコよさ」見た目ではない。本当のカッコよさを持っているかということだ。美学と言ってもいい。二匹目のドジョウを狙わない。意識しなくてもオリジナルな生き方ができているか。そしてその生き方を貫き通す覚悟があるかどうかだ。

このあたりは、コンテンツ製作者(著者)自身の立場としては、
必ず理解しておくべきところ。
私の美学は?

●原則

・メディア
  →コンテント(コンテンツ、ソフト)
  →プラットフォーム(本やCDなど)
  →流通
・この分類に従うと、作家のエージェントはコンテンツビジネス。そして出版社の編集者はプラットフォームビジネス

電子出版ではどうなるのかと考えてみた。
プラットフォームは、無料であるPDFではなく、KindleだったりiPadだったり、PCだったりするし、
流通というのは、InfoTopのような「場」の提供者になりそう。

・売り込みは完成原稿がまだ存在しない時点から始まる。ほんの一、二枚の企画書と数ページのサンプル原稿。そして自分のプレゼン能力。武器はこれだけだ。徒手空拳。だからこそ、作家のエージェントの成功の鍵を握っているのは信用なのだ。

ドライテストが目的ではないにしろ、これも全く同じ。
つくりこむ前にまずは企画段階でマーケティングをする。

●その他

・300万円という、有限会社を作ることのできる最低限の資本金でのスタートだった。しかも、この事務所を借りるにあたって礼金、敷金、前家賃を支払い、家具を購入したことでその大半を使ってしまった。投資を受け入れることも当初の運転資金を借り入れることも一切しなかった。資金力はあまり関係のない、アイデアのセンスと人脈が勝負のビジネスだからそれも可能だったのだ。
・現在、著者が書籍の製作費用を負担して出版する自費出版を請け負う出版社は世に数多く存在している。だが、そうした出版社を通して書籍と呼べるものが完成したとしても、それらが一般の書店に並ぶことは稀なのが現状である。誤解を恐れずに言ってしまえば、書店に並ぶことなく、そして一般の読者に読まれることのない書籍は、「自己満足」でしかない。

電子書籍においてはちょっと違うが、
見よう見まねで作っているeBookやブログなどは、
紙の世界の自費出版に該当するかも知れない。

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