誕生から6歳まで
本の存在は知っていたけれど、後回しにしていた。でも、スーザン・エイセンさん本人から、「読み・算数・百科事典的知識などの知性面を優秀にするためのベースにあるのは、この運動能力なのだ」ということをきき、急いで読み始めた。
よく考えてみれば、すべての学習の基礎に体の発育があるのは当たり前のこと。なのについ、後回しにしていた。この本では発育のプロセスを虹色の各段階にわけて説明してあり、その到達年数に応じて数値化してあるところがとてもわかりやすい。人間能力開発研究所ならではという感じ。
ジャネットドーマンが来日した時に、ブレキエーションの実演をあちこちでやっていたのだけれど、その重要性がいまひとつピンとこなかった。でも、この本を読むと、なぜあの器具が重要な意味をもつのか、それがとてもよくわかる。
また、ブレキエーションができなくても、とくにバランスの運動や、平均台の運動など、簡単に取り入れられるアイデアはたくさんある。
以下にいくつかメモしたところを。
●必要な環境
> ・赤ちゃんは誕生の瞬間に、それまで9ヶ月間をすごしてきた37度強という温度環境から外に出てくるのです。赤ちゃんが出てくる部屋の温度は、たんに私たちにとって適温だという理由から21度くらいになっています。これこそが最初の間違いです。この室温は、私たちにとって快適であっても、赤ちゃんには凍えるほどの寒さです。
> ・床の材質が冷たい場合は、赤外線電球(1個以上)を、できるだけ高い位置に吊るして、熱ができるだけ広い範囲にゆきわたるようにします。
> ・服装はすべて、ゆったりと着やすいものにします。着飾ることが目的ではないのです。女の子だからといってスカートなどをはかせたら、動きにくくなります。
> ・まだ歩けない赤ちゃんは、地球の表面に平行した水平の世界、つまり床の上で暮らすように「できて」いるのです。赤ちゃんにはまだ、骨を支えられる筋肉組織、体重を支えられる骨格、あるいは垂直の姿勢でバランスがとれる身体のメカニズムができあがっていません。
→ これらはとくに新生児に対する配慮。このように年齢別に注意しなければならないことが書かれてあり、助かる。
●重要性
> ・近くを見る能力は、腹ばいと高ばいによって促進されます。それは、目から手までの距離に視覚を収束させる能力なのです。つまり私たちが本を読むときの距離です。物を書くときの距離です。彫刻するときの距離です。作曲したものを書き記すときの距離です。私たちの目から机までの距離です。文明は45センチの長さに宿る、とも言えるでしょう。
> ・読めるような字を書くためには、ベン先をコントロールする能力が必要です。ペン先の動きを目でたしかめる能力には、優れた視覚の収束が必要です。
→ ただやみくもに学力をつけさせようという考え方は、ずれているということだ。早期教育をしたいなら、運動がいかに重要か、認識しておく必要がある。
●コーチとしてのMindset
> ・ベビーカーにひもで固定された小さな赤ちゃんが、目を大きく見開いて、なにか訴えたげにこちらに手をのばすのです。自由になって、木を見たり、葉っぱにさわったりしたいのです。「生きたい!」と言っているのです。子どもたちを解放しましょう。彼らが学べるように。
> ・「とっても面白かったわね」と言ってあげます。赤ちゃんの反応は、すべてあなたしだいです。あなたが悲鳴をあげれば、赤ちゃんも悲鳴をあげます。あなたが笑えば、赤ちゃんも笑うでしょう。— あなたの少しあとから。あなたが一瞬たりとも赤ちゃんを危険な目に遇わせなければ、最終的には赤ちゃんのあなたへの信頼がますます高まるはずです。
> ・子どもと一緒に走り始めるときは、まわりのことを知りたいという子どもの欲求を尊重してあげましょう。子どもがなにかに興味をもって立ち止まったら、そのときは教えてあげるチャンスです。ただし、そのあとはかならず本来の仕事に戻ること。遅かれ早かれ、その場所は子どもにとって珍しいところではなくなります。
> ・子どもが走りながら、笑ったり、ほほ笑んだり、叫んだりするのは、それがこの上ない喜びだからだ。子どもは走ることが大好きなのだ。
> ・天候が許すかぎり、ランニングは外で行うこと。2歳の子供が家の中を走るのは、2ヵ月の子どもがベビーサークルに閉じ込められているのと同じです。
1) 走り始める前に、どこまで走るのか子どもに話すこと。
2) 走り始める前に、どこまで走るのか子どもに見せること。
> ・長年この仕事をしてきた私たちは、教師が生徒に教えられる唯一最大の贈り物は、その科目への愛情であることを学びました。教師が子どもを心から愛し、自分の担当する科目への愛情を子どもに教えられれば、それ以上は何も必要ないのです。
→ 子どもの目線にたつことが大切。間違っても押し付けの「肉体改造」「しごき」のようなことを考えろということではない。子どもが体を動かす喜びを味わう、それを第一におくべきだ。
●バランス感覚を狂わせる過ち
> ・大人と手をつないで歩くには、赤ちゃんは片手を自分の頭のずっと上まであげなければなりません。これではバランスが大きく崩れてしまいます。しっかりつかまっていなければ、転ぶしかありません。あなたも片手を大きく上げて歩いてみてごらんなさい。赤ちゃんがどんな感覚で歩いているか、よくわかるでしょう。
> ・私たちの研究所では、体操をバランス運動の最高段階と考えています。
→ 子どものバランス感覚くずすために、「手をとってしまう」間違いは多くの親がしてしまっている。段差、階段、車がくるような危険がないのなら、できるだけ自分で歩くチャンスをつくってあげるべき。
●運動の選択
> ・私たちがお勧めしたいのは、基本的な身体の動きの延長をもとにした運動です。バラレエ、体操、フィギュアスケートなど、人間の動きを芸術的な形で表現するものや、水泳、登山、スキー、ハイキング、ヨット、乗馬など、人間がこの地球を探るために考え出したものがその例です。