「親業」ケースブック 幼児園児編

子どもの心を開く聞き方と話し方

色々なところで引用される親業。
前からずっと気になっていて、ようやく手にとってみた。


ケースブックというだけあって、全体が学びの多い対話事例で構成されている。
具体的に会話例なので、とても読みやすい。
概念としてはは「能動的聞き方」「私メッセージ」「勝負なし法」と単純にきこえるかも知れないが、
これをマスターできたらとんでもない幸せな親子関係になるだろうなと、思う。
内容も、単にNLPの子育てにおける応用というレベルにとどめることはできない。
この本から学んだマインドセットをひとことでいうと…
すべての子どもには悪意はない。悪意に基づく行為や主張は存在しない。すべての行為や主張の背景には、大人には思いもよらない、子どもなりの言い分がある。この前提で、まず子どもに聞いてみる。
ということだろうか。
その他メモしたところを以下に。
●基本的な考え方

・「ママの友達だったら、ママが自分でいいにいくわよ」「自分のことは自分で」と突き放していたら、自分の気持ちをまとめようがなく、悩み続けたでしょう。

たまたに、突き放してしまうことがある。
これは、ちょうど昨日、娘とのやりとりの中で反省したばかりのところだった。

・短いようですが、これだけの会話に50分かかりました。

親業の本を読むと、とても簡単に会話がなされているように感じるかも知れないが、実際には時間がかかることもある。それでも気長にやりとりをする覚悟が必要だと、思う。焦ったり急かしたりするような状況を前提にしていたら、とても能動的な聞き方はできない。強制やコントロールをしようとしてしまうだろう。

・私が叱りつけたらどうなったでしょうか?”いいこと”をしたつもりで得意になっていた克之は、そんな気持ちをいきなり頭ごなしに傷つけられ、傷つけた私を、うらんだことでしょう。
・「しつけよう」「甘やかしはいけない」と、私はこれまで、泣いた子どもの訴えをすべて退けてきたんだ、と思いました。「さびしかったのね」という私のひと言で、和樹がピタッと泣きやんだことから、それがよくわかりました。どんな場合にも、一度は子どもの気持ちを受けいれれば、次の会話ができることが、よくわかりました。

しつけようとか、甘やかしてはいけないというのは、結局のところ親の世間体であったりする。「他人からダメ親と思われたくない」というエゴによって子どもに接しても、子どもはそれを受けいれない。きっと、そこに愛情がないことを、見抜いているのだ。

・「親業」を学ぶ前には、私は芽衣にたいして、私の母が私にしたときと同じ態度、いい方をしていた。芽衣が、「ビスケットが欲しい」とか、「外に遊びにいきたい」とかいう理由で泣いたとき、私は「赤ちゃんのように泣くんじゃありません」とか「静かにしなさい」と、無意識にいってきた。そのようなときには、私の母が、私のすぐ後ろに立っているような薄気味悪さを感じた。私が子どものときに味わった、拒絶、非受容、嫌悪、劣等感といった感情が、心の中に突然、わきあがってくるように感じた。そして、このような行動が、私と芽衣との関係に与える影響にすぐ気づき、涙ぐむのであった。
・一年半前に、私は「親業」を学んだ。そのときから私は、娘や夫やそのほかの人たちに対して、ずっと寛容になったと思う。より重要なことは、私自身を受け入れられるようになったことである。他人を受け入れるためには、まず自分自身を受け入れることが、できる必要があるからである。
・私は尚子の気持ちなど無視して、私の気持ちを押しつけていたのではないのかな、と。たぶん、私が焦っていたのでしょう。

自分自身の育てられ方に疑問を持つことから、はじまる。
自分自身の育てられ方に疑問を持つというのは、自分自身を成立させている価値観に疑いを持つことでもあるから、とても勇気の必要なことだ。だから、ほとんどの人は、自分自身の育てられ方 = つまり自分の親の育て方に疑問を持つことができない。それを否定することは、今の自分自身の価値観を否定することにつながる可能性があるからだ。しかし、それができないと、子どもを頭ごなしに否定するという間違いを犯し続けることに、なる。
●学びたい言い方

・「芹香は、いま、ごはん、食べたくないのね。さっき、おかし食べたから、まだおなかすいていないのね」
おだてたりすかしたり、そんなことではダメだ。よく子どもの気持ちを聞けば、こんなにうまくいく – と、私は自信を持ちました。
・この朝、智幸の気持ちを聞いて、「いきたくない」のは眠くて起きられないからだとわかりました。

何か別の理由があるかも知れない。
思い込みで子どもの主張の理由を決め付けないことが大切だと思った。

・「寝る前に、お水たくさん飲んだから、おしっこが出ちゃったんだね」一番つらくて悲しいのは、本人のあかりだと気がついてから、叱るのをやめました。夜にたくさん水を飲むと、おしっこが出ることを、あかりはよくわかったのだと思います。それからは、自分で注意するようになりましした。

自分は、子どもが自分で考える機会を奪い、いきなり説教をしていなかったか。
ほらみなさい式の言い方になっていなかったか、反省した。

・「でも、夜に大きな声を出したり、ドンドンしたりすると、隣りの人に聞こえて、うるさいと思われたら、おかあさん、困るのよ」・「おかあさん、怒ってるわよ。 ちょっと、お話しましょ」

お話だけというのが、いい。叱り飛ばすところからはじまるのではなく「話をしよう」という言い方は、いいなと思った。
また、私メッセージでは、大人が見えを張らず、ホンネでなぜ困るのか何に困っているのかを話す覚悟が必要なのだと知った。これを知っているのとそうでないのとでは、ぜんぜん違う。形だけの私メッセージは、意味がない。
●大人の知恵によって子どもを犠牲にしない

・私が焦ってつい自分の子にがまんさせたり、ごまかしたり、怒ったり、ということが多いのです。当然、子どもは不満になります。・しのぶは悪くなかった。それなのに私が、一方的にあやまったので、自分が悪いことをした、とということにされた – おそらくしのぶは、そう思ったんだろうと。あのときは、トモちゃんのおかあさんもいて、私はつい”大人の知恵”で「ごめんなさい」と、瞬間的にいってしまいました。
・「痛いのはボクなのに、どうしておかあさんは、ボクのこと怒るんだよ!!」

大人のエゴによって人間関係の代理をしてしまってはいけない。
子ども同士の人間関係に親が介入してはいけないというのは、正にこのことを意味する。
●おきまりの12型

悩んでいる、問題をかかえている子どもは、なによりもまず、自分のそんな悲しい気持ち、つらい気持ちを訴えたいのです。親に、自分の気持ちをわかってほしいのです。それなのに、親のほうが自分の立場や都合から、おきまりの12型で一方的にいってしまうと、子どもは気持ちを表へ出しにくくなってしまいます。悲しい気持ちを胸の奥に閉じこめて、ますます落ち込んでしまいます。
1.命令「文句ばかりいわないで、いきなさい!」
2.脅迫「いかないと、おとうさんにいいつけるよ」「いったほうがお前のためだよ」
3.説教「幼稚園へはいくべきよ」
4.提案(助言・忠告)「担任の先生に、相談してみたらいいのに」
5.講義・理詰め「幼稚園をいやだと思うからいやになるのよ。いやなことがないように、友だちと仲よくすれば大丈夫よ」
6.非難「ちょっといやなことがあると、すぐ弱音をはいて、いやだねえ」
7.同意「じゃ、いかなくても、いいじゃないか」
8.辱め「おまえは、相変わらず、甘ったれだなあ」
9.解釈「幼稚園がいやだから、そんなふうに考えるんじゃないか」
10.同情「あしたは、いいことがあるかもしれないよ。でも、たしかに幼稚園は退屈で、いやなときもあるよ。わかるな」
11.尋問「いつからそんなふうに感じているの?イジメっ子でもいるの?先生とはうまくいってるの?どうして?
12.ごまかし「まあ、いいじゃないか。あしたになれば、気持ちも違ってるだろ」

私は、たまに、3の説教と5の講義理詰め、9の解釈をしているかも知れない。注意しようと思った。
そしてたまに、7の同意と8の辱め、10の同情、12のごまかしもあるかも知れない。
●能動的聞き方

・「能動的な聞き方」で、すべてが解決すると過信してはいけません。たとえば幼稚園にイジメっ子がいるとしても、イジメっ子そのものをなくすことは、親子の間でできるとは限りません。しかし、外でいやなことがあって、悲しみながら帰ってきた子の、気持ちをほぐしてやれます。そしてなによりも、「能動的な聞き方」をすることで、子どもが親に対して、「おかあさんだけは、いつも私の味方になってくれる」と、安心した気持ちになれ、同時に、いやなことに対処していこうとする意欲が生じ、建設的な解決策が生まれることは、さらに大切です。

12型を捨てて、能動的に聞く。
これができるようになると、子どもの自信・自己肯定感を育むことが可能になる。
●私メッセージ

・親は子どもに対して、「自分は子どもより上の者」「子どもを教え導く立場」と、思っていることが多いようです。そう考えてばかりいると、「下位の者」である子どもに対して、自分の素直な気持ち(ホンネ)を、ストレートには出しにくいものです。一種の”てれ”のようなものが、素直な気持ちの表現をじゃましてしまいます。本当は自分の悩み、いやなことなのに、相手(子ども)のためだ、のようないい方になるのです。
・「わたしメッセージ」の基本は、三つの部分からできています。
1.子どもの問題行動を、非難がましくなく
2.その行動によって、親が受ける影響を具体的に
3.そして、その影響によって、親が感じる感情を正直に
伝えることです。

最初のポイントは、1と2。非難がましくなく、皮肉にならないこと。
そして次に、親としてのヘンなプライドを持たずに正直に伝えること。
両方とも、簡単そうで意外に難しいかも知れない。
●勝負なし法

・対立は、人間関係の真実の瞬間 – 対立をいかに処理するかで、親子関係の絆がいっそう強くなることもあれば、逆に心の傷をあとまで残すような可能性も、あるのでてす。対立をなくそうとするより、いかに解決するかが、重要なことなのです。
・対立を解決する四つの型
1.勝者型× 親がいいと思う形で、問題を解決する。親が勝ち、子どもが負ける
2.敗者型× 子どもの欲求不満や、対立がひどくなるのを避けて、親が子どもに勝ちを譲る。
3.動揺型× 親に確信がなくて、ときと場合に応じて、勝者型と敗者型の間をゆれ動く。
4.勝負なし型○ どちらか片方が、勝つか負けるかするのではなく、「お互いのためにもっともいい解決策」をさがそうとする。
・勝者型の親から育つ子どもの反応
反抗/うらみ/報復/嘘をつく/非難・告げ口する/弱い者いじめ/負けず嫌いになる/親への対抗組織を作る/従順/ご機嫌とり/同調、新しいことをやるのを恐れる/想像の世界に逃げる
・勝負なし型の親から育つ子どもの反応
親に信頼される安心感/親への信頼感/自分で考える力・判断力が養われる/相手の気持ちを理解、思いやる/責任感/自信/自己規律・内的規制/対立を恐れない/柔軟性
・親は子どものコンサルタント
1.自分の考えをよくまとめ、場合によっては必要なデータ・情報を集め、子どもが理解できるように親が話す。
2.一度きちんといったら、同じことを何度もくり返さない。
3.子どもが親のいうことを聞き入れるかどうかは、子どもにまかせる。

子どもが大きくなってからでいいと思っている人も多いかも知れないが、
子どもを侮ってはいけない。三歳の幼児でも、勝負なし法は有効なのだ。
この勝負なし法は、自分にもできていると思う。
そのように接することの意義を、周囲の人に伝えたいなと思う。