ビル・ゲイツ 思考スピードの経営

IT革命革命の波をいかに取り込むか?

10年前に出版された本を、いまさらながら読んでみた。
いまさらだけど、いまさらではない。
学ぶべきところはたくさんあった。
正直なところそれまで、
M$とかWindosなどと揶揄してマイクロソフト嫌い、
ビルゲイツという人にもあまりいい印象をもっていなかったんだけど、
この本を読んで、少し彼に対する見方がかわった。
マイクロソフトという一つの企業を取り払い、
経営者としてのビルゲイツ、そしてマーケターとしてのビルゲイツをみたとき、
見方が変わった。


●ITにさせることと人間がすべきこと

デジタル機器を使って顧客には問題をできるだけ自力で解決するよう手助けすること。ただし複雑かつ価値の高い顧客ニーズに対応するための個人的接触はそのまま維持すること。
例外に関する報告は自動的に作成される。
仕入担当者は例外だけに対応すればよいのである。

重要なことは、この割り切りなのだ。この境界線をどこで引くかなのだ。
これからの時代、すべての人がマーケティングを行う時代においても、同じだ。

情報を利用して革新的な新しい商品やサービスを開発し、提携業者や顧客と一段と緊密に協力することは、常にきわめて人間的な努力なのである。ソフトウエアが情報の鉱脈からますます多くの鉱石を掘り出すようになってもそれを黄金に変えるのが人間であることに変わりはない。

彼は決して、よくあるアニメが描く近未来のロボット支配の世の中を賛美しているのではなく、
人間が何をすべきかというところまで、予見している。
●情報の本質に関する洞察

ウェブサイトは、モノローグからダイアローグ(対話)へ。
ダイアローグからフォーラムへ
情報と時間を取引すること。すべての供給業者、提携業者とデジタル取引を使ってサイクルタイムを減らすこと。

情報と時間を取引する。さららりとかかれているけれど、
この意味は、とても深い。情報は通貨なのだ。

情報技術の目的は「メーク・マネー」にある、ということだ。
情報技術の費用削減に的を絞るより、費用を最終損益への貢献度いかんで評価しなくてはならない。

●顧客の声

顧客の声に耳を傾け、顧客からの悪いニュースを機会としてつかみ、会社の失敗を顧客の望む具体的な改善に変えなければならない。顧客の苦情は会社の財務状況よりも頻繁に点検しなければならない。最も大きな不満をもつ顧客が最大の学習源である。

優秀なすべての成功者は、ただひとつ、同じことを話す。
「顧客は何を考えているか」
ということを。
●外部委託、IT部門と経営のオーナーシップの関係

企業人が大きなプロジェクトを自社の情報技術担当部門ないし外部のコンサルタントにまるごと任せ、自分は「これはあまりにも大変な仕事なので、できあがってから使う」ということは、絶対ダメ。世の中の成功はすべてビジネス系のリーダーが強力なオーナーシップ(所有者としての責任ある行動)を発揮するところから生まれており、情報技術のオーナーシップによるのではない。
外部委託は外部のベンダーが最善のやり方とセットで持ち込み、それが貴社が熟練している技術ではない場合か、主な開発の焦点でもないときにはうまくいくが、戦略的なアプリケーションの開発を外部委託にするのは、私としては勧めない。もしもベンダーが出来の悪い仕事をしたり、ある日突然プロジェクトにさよならを告げて立ち去ったら、その会社はどうするのだろう。

この類の話をきくとき、今までの、組織に属する立場の自分、エンジニアとしての自分は、経営と橋渡しのできるCIOの重要性などということについてばかり考えてきた。しかしよく考えてみると、これは個人にも当てはまるのだ。
どういうことか。
確かに、10年前にビルゲイツがこれを書いた時には、組織について言及されていたかも知れないが、これから、企業というカタチが崩壊し、次々と個人的なビジネスが生まれていく時代。
そうなった時、誰もがアウトソーシングを行い、誰もがプロジェクトマネジメント技術を必要とするようになる。このときに、外部任せ、ツール任せ、ツール依存のビジネスをしてはいけないということなのだ。

毎年の資源配分に当たって、システムを動かし続けるための比率をますます小さくし、新しいビジネス・ソリューションのための比率をますます多くするようにしているか?

運用費用だけで評価してはいけないし、そもそも運用費用がかさんで行く状況は危険なのだ。
運用ではなく、戦略的な開発の比率を高めなければならない。

一般的には、会社全体のコミュニケーションや統合にかかわる場合は、ソフトウエアのパッケージを全社的に規格化すべきである。そうでない場合には、部署や事業単位が、プロジェクト管理、パンフレットのデザイン、マーケティング分析、製品開発など、自分たちのビジネスの特定のニーズに合った最適のアプリケーションを自由に選ぶべきだろう。ビジネス・アプリケーションが主流のプラットフォームで利用できるかぎり、中央の情報技術部門は個別の事業単位の決定プロセスにあまり介入しない方がよい。

この統制に関する考え方も、この本がかかれた10年間において企業におけるあり方の手本とされたにとどまらず、これから10年間、「企業」というあり方が進化し、個人のビジネスが重要になる時代、すべてがプロジェクトになる時代においても大変参考にされるべき内容だと思う。
つまり、
インフラ、コミュニケーションツールについては標準的なものを使う。
それ以外は、自由に選べ
ということに、なる。
企業におけるナレッジマネジメントが組織を、企業のあり方を一変させたのと同じように、
ナレッジマネジメント for Personが、今後は個人を一変させる時代になるような気がする。
そのように考える時、ビルゲイツのこの本は、決して古い本では、ない。

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