複雑系のマネジメント10の発想転換
中間管理職不要論を排す!
ちょっと古い本だけど、中間管理職の必読書かな。
いまだに、この辺がわかってない人、案外多い。
かつての職場で私がやろうとしていたことが何なのか、
私がもどかしい思いを感じていた理由が何なのか、
それが、これを読んでスッと理解できた。
●情報の価値
・「この情報は、いくらの価値があるのか?」「この情報を提供すると、どれだけのポイントが得られるか?」情報に対して、常に、こうしたことを考えながら、職場において情報を公開し、共有するというメンタリティのビジネスマンというものは、著者の価値観からすれば、かなり「器」の小さなビジネスマンであるように感じられる。「なぜ、職場の同僚に、貴重なナレッジやノウハウを提供し、助けるのか?」と問われて、「インセンティブ制度があるからだ」と答えるビジネスマンの精神は貧困である。「同僚を助けることによって、自分自身も、より良いビジネスができるからだ」と答えられるビジネスマンは、豊かな精神の持ち主である。
・本当に優れたナレッジやノウハウというものは、「金銭的価値」と交換されるものではなく、むしろ、他の優れたナレッジやノウハウと交換されるか、「精神的充足」と交換されるものである。(→仕事の「報酬」は、「仕事」である。)
1997年に書かれたナレッジマネジメントに関する言葉の中に、
コンテンツビジネスの本質が書かれていた感じだ。
●企業文化
・イントラネットは「漢方薬」である」それは、イントラネットを導入するだけで、企業は、あたかも「体質」を変えるように、「創発」のプロセスを経て、徐々に、その「企業文化」を変えていくからである。
・イントラネットは、ビジネスマンの意識や行動スタイルを、そして、組織文化や企業文化を、どのように変えていくのだろうか? 端的に言えば、「オープン」(開放性)、「ボトムアップ」(平等性)、「ボランティア」(自律性)という三つの文化へと、変えていくのである。しかし、これに対して、これまでの企業文化は、これらの三つの新しい文化とは逆の文化であった。「クローズ」(閉鎖性)、「トップダウン」(階層性)、「リーダー」(他律性)。これら三つの古い文化の中で育ったビジネスマンの意識と行動スタイルは、基本的には「リーダー」(指導者)に対する「フォロワー」(追随者)としての意識と行動スタイルであり、それゆれ、これまでの企業文化は、「フォロワー文化」とでも呼ぶべき文化であった。
・当初、イントラネットがもたらす「新しい文化」と企業に存在する「古い文化」との「文化摩擦」の様相を呈するだろう。例えば、若手社員がインターネットで「ネット・サーフィン」をして遊ぶ背景には、「社会や人間に対する好奇心」が存在する。また、女性社員の”電子メール井戸端会議”の背景には、「本音での対話への欲求」がある。さらに、個人ホームページでプライベートな情報を発信する背景には、「自由な自己表現への願望」が隠れている。そして、こうした社員の中にある「好奇心」や「欲求」や「願望」を大切にすることこそが、「フォロワー文化」から「ボランティア文化」への変革の出発点なのである。
・「イントラネット」の本質は、単なる「企業戦略によるインターネットの利用」なのではない。その本質は、何よりも、「インターネットによる企業文化の変革」なのである。
かつての職場では、中間管理職だけではなかった。
経営トップまでが、古い文化から新しい文化への変化を、理解できなかった。
自分は、この文化の変化をやろうとしていたんだ。
●情報共鳴
・通常、「データ」「ナレッジ」「ノウハウ」の共有というと、まず、「データ」レベルの情報の共有を進め、それがある段階に達した後、「ナレッジ」と「ノウハウ」のレベルの情報の共有に着手するという発想を持つ人が多いが、これは正しくない。これら三つのレベルの情報は、あくまでも、同時に進めていくべきものである。いや、むしろ、同時に進めることによって、より効率的な「情報共有」を実現することができる。
・「ナレッジ」や「ノウハウ」が豊かに伝わるときには、かならず「送り手」と「受け手」の間で、「共鳴」や「共感」が生じているのである。そして、このことが、「データ」レベルの情報と「ナレッジ」や「ノウハウ」のレベルの情報の、「情報共有」における根本的な違いなのである。
●コミュニケーションの変化(ノウフー法のための人脈→呼びかけ法のための人脈)
・「ノウフー法」の場合は、「特定少数」のメンバーの間に良好な「人間関係」が成立していればよいのに対して、「呼びかけ法」の場合は、「不特定多数」のメンバーの間に良好な「人間関係」が存在していなければならないという違いである。
・「電子メール」と「生きた言葉」でナレッジが共有できる。「電子コミュニティ」と「共感の場」でノウハウが共有できる。
SNSの世界においてもあてはまる話。
とくに、ノミニケーションなどが存在しにくい世界では、
この呼びかけられる人間関係をどれぐらいもっているかが、
とてつもなく重要だったりする。
●意思決定
・中間管理職が携わる「意思決定」の役割を、次の「三つのレベル」に区分しておこう。
1)事務的承認 : 問題点がないことの確認を中心に事務的に行われる承認行為。定型的業務。時間を食う。
2)業務的判断 : 業務の遂行のために必要な、あまり「リスク」を伴わない判断行為。ある程度の「判断能力」が求められる。長い現場経験や業務知識が生きる領域。
3)企業的決断 : 何らかの「リスク」を伴う決断行為。その役割を果たさない限り、中間管理職から上級管理職、さらには経営者の道は開けないという重要な役割。
・「給湯室の改善」に関する意思決定は、「業務的判断」のレベルの意思決定である。これを「企業的決断」を主要な役割とする社長に持ち上げることが錯誤なのである。いくら組織が「フラット化」しても、こうした「意思決定」のレベルの錯誤を起こしてはならない。こうした落とし穴に陥ることを免れるために求められるものは、意思決定における「適切な階層構造」であり、「適切な業務プロセス」であることは当然であるが、さらに重要なものは「ビジネス組織の常識」なのである。
・「強い組織」とは、課長が部長レベルの決断ができ、部長が社長のレベルの決断ができる組織である。
・不思議なことに、この「稟議」の文化は、「稟議書が回ったときには、すでに意思決定は決まっている」(根回し)
●教育から孵化へ
・これまでの「エデュケーション」(教育)というスタイルから、「インキュベーション」(孵化)というスタイルへの成熟が求められるのである。言葉を換えれば、「人を教え育てる」というスタイルから「人が自然に育つのを支援する」というスタイルへの転換である。
自分はたいてい、この「孵化」のスタイルで部下と接していた。
でも、古い文化から抜けられないほとんどの人は、
上から下に教える「教育」というスタイルしか理解できない。
●その他
・チームを組むということは、互いの「強み」を結びつけるという意味と同時に、互いの「弱み」を補い合うということをも意味している。そして、そもそも、「自社の強み」が明確であるということは、「自社の弱み」をも知り抜いているということである。
・「一つに徹する」ためには、「全体を洞察する」ことができなければならない。
・「簡単なもの」ほど、使い方において「奥が深い」のである。
確かに、Twitterなどのように「簡単なもの」ほど、使い方において奥が深い。
どう使うのか。それが重要だ。